みのりブログ

毎日を楽しく暮らしたいのんびり者です。

読書感想

『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』感想 かたくなな心を解きほぐす鍵【ぼちぼち晴耕雨読】

読書感想 2023年 7月その② 「SNSのキラキラした写真が投稿者のすべてではない」 そんなことは言われるまでもなくわかってる。 なのに、なぜ振り回されてしまうのだろう? この小説の主人公も、そして私も。 『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』の話です。 …

『「罪と罰」を読まない』感想 【ぼちぼち晴耕雨読】

読書感想 2023年 7月 コロナ罹患後、約1ヶ月。いまだに咳止めと痰切りの薬は手放せないものの、ようやく日常生活が戻ってきました。 闘病中に困ったことのひとつが、集中力がまったく続かないこと。簡単な家事をやるのもひどく疲労してしまう。 それならば、…

若き大神官は救世主かペテン師か SFマンガ『夢みる惑星』【今週のお題】

今週のお題「SFといえば」ぴったりの展覧会があったのに…… 行きそびれてしまいました、萩尾望都SF原画展。 知ったのは最終日。6年前から展示数を大幅に増やして各地を巡回中で、そのうち東京凱旋するだろうとのんびり構えていたら……不覚でした。(公式アカウ…

女たちの紡ぐ物語 「塩袋と伝統のギャッベ展」と小説『からくりからくさ』

絨毯、キリム、草木染め。 古くから女の手仕事とされてきた染織工芸は、女性の感情と深く結びついている。 外出機会が多かった5月。たばこと塩の博物館で開催された「塩袋と伝統のギャッベ展」にも足を運んでいました。いつの話?という感じですが…… www.mus…

さよなら、いつかまた会いましょう。今週のお題「本棚の中身」

我が家の本棚には、1軍と2軍がある。 失礼な呼び方だけれど、この分け方は「世間での評価や金銭的な価値」とは無関係です。 2軍本棚に入れるのは、好みに合わなかったもの、人から譲られたもの、役目を終えて今の自分には必要なくなったもの。 それらを処分…

たとえ世界から置いていかれても 『団地のふたり』読書感想

読書感想 2022年6月 『毎日を楽しく暮らしたいのんびり者です』 これは私のプロフィールの書き出し部分です。 実際は日々悩み、あくせくと暮らしている身ですので、綺麗ごとすぎるかなぁとも思うブログコンセプト。しかし、けっこう気に入っています。 現実…

続く日々、毎日の食卓。エッセイ『いわしバターを自分で』読書感想    

読書感想 2022年5月 「本と出会うのは運命。わざわざ探さなくとも、読むときは読む」 最近、本の情報を集める時間がめっきり減りました。昔は雑誌の書評欄や本屋の店頭を眺めては、好みの新刊がないかチェックしたものですが……。 新規開拓をするパワーがない…

こんな「カワイイ」見たことない!『上野リチ展』のすすめ(~5/15まで)

『上野リチ ウィーンからきたデザイン・ファンタジー』展 4月の半ば、三菱一号館美術館で開催されている『上野リチ』展へ行ってきました。 JR東京駅から徒歩5分と好立地の三菱一号館は、日本であまり知られていないアーティストの紹介が上手なイメージがあ…

スイーツ&謎解き!『ときどき旅に出るカフェ』『みかんとひよどり』読書感想

読書感想 2022年 3月 ついに無くなってしまった。年末に買い込み、大事に食べてきたチョコレートウエハース。先ほど食べたのが最後の1個だったのです。新しく買おうにも店舗・通販ともに売り切れで、入荷はおそらく次の冬……。 未練がましくパッケージを眺め…

あの子供の声は、自分だ──実話をもとにした『罪の声』小説&映画感想 

読書&映画感想 2022年2月 「キツネ目の男」「青酸入り菓子ばらまき事件」 グリコ・森永事件に詳しくない世代でも、これらの単語には聞き覚えがあるのではないでしょうか。 企業が「かい人21面相」を名乗る犯人に翻弄された昭和の大事件も、時効を迎えた今は…

実話怪談×ミステリー『火のないところに煙は』芦沢央【読書感想】

読書感想 2022年1月 怖い話はお好きですか? 私はたいへん臆病な性格です。態度に出さないので知る人は少ないけれど、ホラー類はかなり苦手。匿名掲示板発でいまや萌えキャラとして定着した感のある「八尺様」ですら、本編を読むとそわそわしてしまいます。 …

【読書感想】桐野夏生『ハピネス』華やかな生活の裏にひそむ虚無

読書感想 2021年11月 桐野夏生さんの作品は『OUT』『グロテスク』など、寝食を忘れて読んだ記憶があります。 今回の『ハピネス』は題材的に『魂萌え!』のような内容かな? そう思いながらも気が進まず、ここ数年は積読状態の本でした。 しかし読み始めてみれ…

【今週のお題】『るきさん』とお風呂 【読書感想】

今週のお題「お風呂での過ごし方」 丸一日、お風呂場で過ごしてみたらどうなるだろう。 浴槽のフタを机代わりに仕事をし、本を読んだり、食事もお弁当をつくって毎食きちんととる。トイレだけは例外として、夜は布団を持ちこんで就寝(背中とお尻が痛いのは…

【読書感想】芦沢央『許されようとは思いません』禁忌の一線を踏み越えるとき、人は何を思うのか

読書感想 2021年10月 【 後味の悪い 】物事がすんだ後に、あまり良くない感じが残るさま 普通ならば褒め言葉にならないでしょう。けれど、あえて「後味の悪い小説だった」と表現したい、そして面白い短編集でした。 ミステリーと銘打たれた本作品には、当然…

【読書感想】『君と夏が、鉄塔の上』過ぎゆく夏の思い出にどうぞ!

読書感想 2021年9月 男、女、料理長型、烏帽子型あるいは猫耳。 これらがなにを指す用語か、一体どれくらいの方がわかるでしょうか。 正解は鉄塔の種類。こんなにユニークで、多種多様な呼び名があるんですね! 『君と夏が、鉄塔の上』の主人公は鉄塔マニア…

【読書感想】『昨日の海は』 過去へ向かう旅──心優しい少年の青春ミステリ―

読書感想 2021年8月 その② 今まで会った覚えもない、それどころか、存在すらも知らなかった伯母と従姉妹。 ある日、突然「明日、東京から2人がうちに来る」と母親に告げられて、戸惑いや反発を感じない思春期の少年がいるでしょうか。しかも、しばらく同居す…

【読書感想】『風鈴』と『サマータイム』ふたつの小説を「3人」というキーワードで読む

読書感想 2021年8月 松浦理英子さんの「風鈴」を読みました。 作者の著作を手にとったのは「犬身」(けんしん)が最後なので、ずいぶんと昔のこと。 幼いころから犬を愛し、「自分の魂は人間よりも犬に近い。叶うならば、この身も犬へと変わりたい」と願い…