みのりブログ

毎日を楽しく暮らしたいのんびり者です。

若き大神官は救世主かペテン師か SFマンガ『夢みる惑星』【今週のお題】

今週のお題「SFといえば」ぴったりの展覧会があったのに……

行きそびれてしまいました、萩尾望都SF原画展。

知ったのは最終日。6年前から展示数を大幅に増やして各地を巡回中で、そのうち東京凱旋するだろうとのんびり構えていたら……不覚でした。(公式アカウントをフォローしないから!)

 

 

開催期間も2週間と短かったのですね、残念。

 

鑑賞できなかった反動でSFマンガ熱が高まってしまった私。

そうして蔵書から選び出したのが『夢みる惑星』 80年代に描かれた少女マンガです。

現在ようやく半分までは読み終えたでしょうか。

手にとるのは10数年ぶり?と本当にひさびさ。それなのにストーリーはもちろん、セリフの数々を鮮明に憶えていることに我ながら驚きました。

 

物語を再読するのは贅沢な時間だと思います。

星の数ほどあるマンガや小説のなかで出会えるもの、まして何度も読み返すほど好きになる作品なんて、本当に一握りですから*1

 

せっかくの機会なので、この名作を紹介させてください!

 

夢みる惑星』 佐藤史生(さとう しお)

 

 

舞台は権勢を誇るアスカンタ王国。

不義の子として世間から隠されて育った主人公・イリスは、彼の存在を知った父王から後継者に据えられそうになります。

玉座の重圧と、腹違いの嫡子との争いからのがれる逃げ道が、イリスにはひとつだけありました。

それは、神殿の「大神官」となること──

 

逃げ道とは言っても、そちらも厳しい運命です。

かつては王と並ぶほどの力を持っていた神殿も、今は形骸化し、強力な“幻視能力”をもつ大神官もいない。

イリスにも幻視能力はほとんどありません。そのかわり王家の血筋と神秘的な美貌は備えていた。

神殿の復興を願う僧たちは、王と国民をだまし、イリスをハリボテの大神官に仕立てようともくろんだのです。

 

こう書くと血も涙もないふるまいですね。

しかし、僧たちには彼らなりの信念がありました。この地を大きな災厄が訪れるとき、人びとの心の支えとなる場所を残したかったのです。

 

 

必要なのは幻視能力ではなく大神官です

人びとが救いを求めて神殿の階段をかけのぼってくる…

その時 百万の美も千万の富も もはやチリに等しい

(中略)

大神官は人に非ず…

それは器 神の器です

器は中が空(くう)であってこそ役立つのですから

佐藤史生夢みる惑星』 第1話『竜の谷』より引用

 

 

神殿に住まう唯一の幻視者であり、イリスの「師匠」であった神官エル・ライジアのセリフ。

 

不幸なことに、エル・ライジアが恐れた災厄は数年後に現実のものとなりました。

神殿と同じく王国から冷遇され、ほそぼそと研究を続けてきた科学者たち。彼らが「大陸移動にともなう大災害」を予告したのです。

 

 

我われは暖かいという理由から 火にかけたナベの底に集まったアリの群れです

災厄は時間の問題なのです

佐藤史生夢みる惑星』 第4話『星の都』より引用

 

 

予測されるのは大規模な地震と火山噴火、津波に洪水……。安全な場所に逃げなければ、人類は滅亡してしまいます。

けれど、どこに逃げる? 

逃げる場所があったとして、科学をまじないの親戚としか思っていない王国の民をどのように説得する?

 

イリスならば、その役目が背負えます。200年ぶりの大神官、強力な幻視能力をもつはずの彼ならば。

 

イリスは神の名のもとに遷都を宣言。

「王にも大神官にもなりたくない」そう泣いていた少年は、幼いころの繊細さを残したまま強かに成長しました。

使命はただひとつ、人びとを逃がすこと ── 豊かな都から少しでも遠く、ひとりでも多く。

人類すべてを相手どった一大ペテンがいま幕を開けます。

 

 

ここがイイ!① 戯曲のようなセリフまわし

 

冒頭で何年たっても記憶しているとセリフについて触れました。いくつか引用した通り、印象的な名言が揃っています!

マンガは絵と文章でつくりだす芸術だなあとしみじみ。

心地いいリズムを刻む言葉が戯曲を思わせます。

 

ここがイイ!② 透明感のある硬質な絵

 

細い線が特別好きというわけではないのですが、『夢みる惑星』はこのタッチがとても合っていると思います。繊細な絵柄と言葉の選び方、どちらが欠けても世界観が壊れてしまう。

 

この作品には竜が人間のパートナーとして登場します。翼竜の背に乗り星空をかけるシーンなど忘れがたい美しさでした。

 

ここがイイ!③ キャラクターたち

 

あらすじは主人公の挙動に絞りましたが、魅力的なキャラがたくさん登場します。

復讐に燃える毒舌な少年奴隷、人を惹きつけてやまぬ力をもった舞姫。イリスへの対抗心と情で苦しむ異母弟と、その婚約者でありながらイリスに憧れる公女……などなど。

 

イリス自身も一筋縄ではいかない人物。

なにせ他の幻視能力をもつ神官すべてを暗殺しろと命じたくらいです。大神官就任式にアスカンタ外部の幻視能力者が出席すれば、自分に能力がないのがバレてしまうわけで……ここらへんはかなり血なまぐさい展開でした。

 

ときに汚い手を使いながら対立する勢力と渡り合う強さと、「神の代理人」としてしか生きられない孤独。

そのふたつをじっくり描いた本作は、深い人間ドラマも見どころです。

 

 

宗教と聖職者、それにすがる人々、迫りくる災害と民衆への扇動。

SFは現代社会との共通点が見つかることも多いですね。

私の持っている文庫版(1996年発行)では阪神淡路大震災とつなげた解説がされていましたが、あれからますます現実とリンクする事態に……。複雑な気持ちを抱きつつ、夢中でページをめくっています。

 

さまざまな楽しみ方ができる『夢みる惑星』、いちど読んでみませんか?

 

よければ感想も聞かせていただけると嬉しいです!

 

 

読書感想カテゴリはこんな記事も書いています。芦沢央さんいいですよ~

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*1:偏愛気味を自覚しているので尚更です

坂道をのぼった先に見たものは【最近あった3つのいいこと】

今週のお題「最近あった3つのいいこと」

 

帰り道の足取りが重くて仕方ない日がある。

たとえば休憩室で同僚の悪口を聞いてしまったとき*1

人格者なわけでもなし、他人への愚痴は自分だって山ほど抱えているけれど、休憩中という短い時間・限られた場所で否応なしに聞かされる悪口は辛いものです。逃げ場がないので。

 

そんなとき、小さな「いいこと」があると本当に慰められますね。

ちょうど書きたいと思っていた内容にピッタリのお題、参加させていただきます!

① スクワットの効果を実感できた

 

minorimainiti.hatenablog.com

 

上の記事を書いておきながら、暑すぎてウォーキングをサボっている私。

いや、だって異常ですよ……この気象。早朝でも外に出ると水をかぶったように汗まみれになってしまう*2

最近では諦めて、最寄り駅手前で降りる・買い物に歩いていくなど、日常生活に運動を追加するやり方へシフトしました。

 

代わりに行っているのがスクワット。

有酸素運動とスクワットは組み合わせると効率が良いと聞き、セットでやるのが習慣化していたんです。歩けなくなったぶん、スクワットをより意識してやってみよう、と。

 

これが結果的に大正解でした! さすが筋トレ界の王様……

階段をのぼるときの足取りが軽やかなこと! 坂道で自転車を漕ぐなんてケースでも力を発揮します。

立ったり屈んだり、足腰に負担がかかる作業は意外と多いもの。草むしりをした日にも「これ、スクワットで鍛えてなかったらキツいだろうなあ」としみじみ思いました。

慣れてくると、いま強化しているだろう筋肉が運動しながらわかるようになるんですよね。最初はポーズを真似するだけで精一杯だったのが嘘のようです。

 

坂道で自転車からおりずに到達できる地点が、年々手前になるのを寂しく思っている同年配の方。

ぜひスクワットを試してみてください!

 

 

② 小さな守り神(ヤモリ)を発見

 

我が家でくりくりと丸い目のヤモリを見かけました。

都市部とはいえ古い家なので、外壁や庭先で見ることはしばしば。しかし、室内で遭遇するのは初めてです。

家のなかにいるのでは、うっかり傷つけたらと気が気ではありません。できたら外へ逃がしてやりたい。しかしSNSで写真を楽しむ程度に爬虫類への耐性がある私も、触るのはちょっと……。なによりヘタに手を出してはヤモリのストレスになりそうで、悩んでしまいました。

 

結局「野生なんだから、我々人間より動きは俊敏だろう」と結論付けて、共生していくことに。

家守と漢字をあてるだけあり、ヤモリはゴキブリなど害虫を食べてくれる有難い存在*3

これからも適度な距離を保ちながら付き合っていきたいと思います。

 

 

③ これが噂の……!「タコさんウィンナー」の花、整列する

 

Twitterで定期的に話題にのぼる「タコさんウィンナー」のような花。

nlab.itmedia.co.jp

 

正体はザクロの花のガク部分です。

一応知識はあったものの、こんな光景を目にして記憶にしっかり刻み込まれました。

 

↓↓↓↓↓

 

 

橋の欄干のうえにキレイに横並びッ……!

 

並べたのは子供でしょう*4。高い位置なので、周囲の大人が手助けしたのかも。

夏の強い日差しの降りそそぐなか、おでこに汗を浮かべてザクロの花をひとつひとつ整列させる姿を想像すると、ほほえましさに嫌なこともすっ飛んでしまいました。

 

どこのどなたか知らないけれど、癒しをありがとう。

素敵なものを見られて1日とっても幸せな気分だったよ。

 

 

今週のお題」ではこんな記事も書いています。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

 

*1:前職での話。忙しく、外出して休憩するという選択肢がなかった

*2:ここ数日は涼しいですね、各地の大雨が心配ですが

*3:うちはハエトリグモも益虫として優遇しているので、争わず共存してほしい

*4:大人でも、それはそれでホッコリします

栄養士さんへの手紙 切り干し大根のレシピ、私まだ使ってます【今週のお題・好きだった給食メニュー】

「栄養士の学校訪問」って行事、覚えてますか?

 

学校栄養士が給食時間に訪れて、口をもぐもぐさせる生徒のかたわらで人気の献立や素材のリクエストを聞きとり、慌ただしく去っていく。年に数回あった出来事。

 

私、その栄養士さんに熱烈な感想を伝えたことがあります。

給食の切り干し大根煮があまりに美味しすぎて!

 

お題に関連して、もしくは切り干し大根のレシピを探してこのブログにたどりついた方へ。

騙されたと思って、切り干し大根にさつま揚げを入れてみてほしい。

万一「騙された!」となっても、金銭的ダメージはわずかなのでぜひ試してみてください

 

それまでだって切り干し大根はもちろん好きでした。

和食の心、箸休めに嬉しい一品、主菜が揚げ物でも切り干しがあれば大丈夫。

さつま揚げを入れるだけ。それだけで「好きな給食メニュー」トップに躍り出るとは、自分のことながら不思議な気分でした。でも間違いなく本心です。

 

プラスアルファの具合が絶妙だったのでしょう。

家で食べていた切り干し大根に複雑な旨味を追加(油揚げでは出しにくい)

ボリューム増で満足感アップ、しかし主役の切り干しを邪魔しない

すぐに導入できる手軽な工夫でこんなに美味しくなるのか!と、そこらへんにも感動したわけですね。料理に慣れない学生にも、これなら真似できると思わせた。

 

 

栄養士さんは快活な印象の若い女性でした。はきはきと笑顔でしゃべる姿と、三つ編みにした長い髪を揺らして教室を歩く様子をよく憶えています。

 

給食の味つけがとても好きなこと、自分の家の味にどこか似ていてホッとすること。

忙しい業務の合間にそんな告白をされて、すこし困ったかもしれません。

でも、彼女は嬉しそうに「ありがとう」と言ってくれました。

 

栄養士さん、お元気ですか? 私まだ教えてもらったレシピを使ってるよ。

懐かしさで泣きたくなるような、遠い母校での思い出です。

 

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おすすめ商品 「ゆがき大根」山城屋

 

思い出効果もあり、長年の切り干し大根愛は深まるばかり。

そんな私が惚れ込んでいる商品があります。もう何度リピート購入したことか!

 

 

それがこちら! 山城屋の 「ゆがき大根」 です

 

茹でてから天日乾燥させた茹で干し方式なので、通常の切り干し大根とは見た目がかなり違います。水戻しのあと調理すると、その差は明白。

 

 

さつま揚げいりの切り干し大根煮。(具が多すぎて肝心の切り干しが見えにくい……!)

下のほうの、かんぴょうと見間違う存在感ある具材が「ゆがき大根」です。

 

これが本当に美味しい!

見た目はかんぴょうに似ているものの、食感はふっくら柔らか。いっしょに煮込んだ野菜などの風味と出汁をたっぷりと吸い込みます。

ゆがき大根にハマってから、普通の切り干し大根を買う機会がめっきりと減りました。

 

我が家の定番の組み合わせは、切り干し大根とさつま揚げの他に

 

・人参

・しめじ

・大豆の水煮

・刻んだ生姜を少し

 

こんな具材で作ることが多いです。

 

さつま揚げは出来るだけシンプルなものがおすすめ。

かためで、商品名に「昔ながらの~」とか書いてあるタイプがいいですね。枝豆など具が入ったものを使ったこともあるんですが、煮崩れしやすく食感もイマイチでした。

愛媛県の郷土料理「じゃこ天」でもオツな味になります。

 

 

 

切り干しサラダもお気に入りで、最近はこちらのほうが出番が多いかもしれません。

お酢やレモンをきかせてサッパリと! 合わせるのは人参・きゅうり・カニカマなど。

煮込まず、ほとんど水戻しもせずに作るため歯応えがあり、食べていて楽しい気分になります。

 

上はゆがき大根、下は切り干し大根。どちらも美味しいけれど、太さが2倍くらい違います。

 

 

暑くて台所に立つのが億劫になる夏。

一品で野菜を数種類とれる切り干しレシピは、毎日の献立に悩む人の心強い味方になります。

みなさんも是非ゆがき大根で作ってみてください!

 

 

各通販サイトのほか、イオン系列スーパーでもお手頃価格で買えますよ*1

 

www.kanbutsuya.jp

 

Oisixでも取り扱いがあるようです。嬉しい!

www.oisix.com

 

 

Oisix特別お題キャンペーン「好きだった給食メニュー」

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*1:ゆがき大根の唯一の欠点が取り扱い店舗が少ないことで…………イオンお願い、ずっと仕入れつづけてな……定期的に買ってるから

女たちの紡ぐ物語 「塩袋と伝統のギャッベ展」と小説『からくりからくさ』

 

絨毯、キリム、草木染め。

古くから女の手仕事とされてきた染織工芸は、女性の感情と深く結びついている。

 

 

外出機会が多かった5月。たばこと塩の博物館で開催された「塩袋と伝統のギャッベ展」にも足を運んでいました。いつの話?という感じですが……

 

www.museum.or.jp

 

素晴らしい展示だったので、自分が忘れないためにも文章にしたいと思います。

 

記事後半は、展覧会と関連した小説のご紹介。

ギャッベ展を鑑賞しながら強い既視感に襲われました。

『からくりからくさ』(梨木香歩

読んだことのある方なら「ああ……」と納得していただけるかもしれません。

 

よろしければ最後までおつきあいください!

 

「塩袋と伝統のギャッベ展」 たばこと塩の博物館

 

 

 

展覧会タイトルの「塩袋」「ギャッベ」、耳慣れない単語に一体なんだろう?と首を傾げた方も多いのではないでしょうか。

 

塩袋*1は名前通り塩を保存するための袋で、遊牧民の生活には欠かせない道具。

美しい模様を織り込んだ塩袋は実用品であると同時に、世界にコレクターがいる民族工芸品でもあります。部族ごとにデザインに特徴があり、所有者がわかるようになっています。

 

こちらのサイトで丁寧な説明とともに塩袋のコレクションを見ることができます。ぜひリンクから飛んでみてください。色合いもさまざま、華やかな房飾りがついていたりと多種多様! 

tribe-log.com

 

それにしても、筒状にすぼまった凸型……ちょっと変わった形状ですよね。

奇妙なつくりの謎は、遊牧民と家畜との関係を考えると答えが出ます。

なぜ口がすぼまっているのか── 答えは「家畜が塩を勝手に舐められないように」!

 

遊牧民にとって家畜は財産ですが、いくら大事でも紐につないでおくわけにはいきません。

広大な大地で家畜をコントロールする手段。それが「塩」なのです。

 

草食動物が餌とする植物には塩分がほとんど含まれず、そのため家畜は本能で塩を求めます*2

人間が塩を与えてくれると理解すれば、囲ったり拘束しなくとも彼らは従ってくれる。

展覧会ではこの仕組みを「生理的な紐」と表現していました。

 

塩袋の奇妙な形状は、家畜の頭が入らないサイズに作られているそうです。

草食動物に塩が必要なことも「そう言われればそうか」程度の認識だった私には、すべてが未知の世界。身近にいる動物といえば犬・猫なので、ついつい塩分はとらせちゃダメ!と思い込んでいました。

 

 

もうひとつの「ギャッベ」は遊牧民絨毯の一種。

しかし、精緻な芸術品として高額でやりとりされる絨毯とは違い、基本的に売買はせず家庭内で使われるものです。

それゆえに織りが粗かったり、素朴なデザインだったりと、絨毯の原型と呼ばれるギャッベならではの魅力が楽しめます。

 

商品として考えていないためか、モチーフも自由奔放で驚かされました!

植物や孔雀・ライオンといった動物、少女たちの群舞のような可愛らしいデザインも。伝統的な絨毯よりギャッベのほうが現代のインテリアには映えるかもしれませんね。

技術がまだ拙い少女の練習台でもあったらしく、素人目にもガタガタしてるかな?とわかる品があり微笑ましかったです。2人で同時に左右から織ったものとなると、技量を比較されてしまい少々気の毒でしたが……。

 

 

キリムも展示されていました。

遊牧民絨毯・ギャッベはどちらも毛足が長い織物ですが、キリムは平織り。他の2種よりも軽く薄いため、生活のさまざまな場面で使われるそうです。

 

展覧会 感想まとめ

 

ギャッベも塩袋も、生活に密着したものだからでしょう。

きれい!目の保養!と単純に楽しむのと同じくらい、これを作った女性たちの生活に思いを馳せてしまいました。

遊牧中に簡易な織り機で織ったギャッベは、最後に真ん中でつなげて完成させるのですね。住まいを移動しながら染織作業をするというのも、やっぱり想像がつきません。

 

絨毯ひとつを完成させるのにかかる、気の遠くなるような時間。いったい何を考えて、どんなことを話しながら織り上げるのか。

そんなことを考えつつ、長く展示室で過ごしてきました。

 

 

本展覧会は終了してしまいましたが、塩袋は過去にも何度か企画展に出品されているそうです。

面白いテーマの展示が多いので、スカイツリー・押上散策の際にはぜひ寄ってみてください!

 

www.tabashio.jp

 

 

『からくりからくさ』 梨木香歩

 

『からくりからくさ』は手仕事に魅せられ、古い日本家屋で共同生活を送る女性たちの物語です。

糸を紡ぎ、植物の枝葉をとってきて草木染めをし*3、朝な夕な機を織る。

展覧会でこの小説を思い出したのは、登場人物のひとりがキリムを研究していたためでした。

 

 

 

蓉子・紀久・与希子・マーガレット。

若い女性が4人集まればさぞ華やかな……と想像しますが、蓉子の祖母の遺した家に集まった彼女たちの日常はぐっと地味なものです。

ていねいな暮らし系の小説と思いきや、食費を節約して網戸を導入しよう!と庭の雑草を料理しはじめる展開も。その様子はまるで大人のおままごとで、ジャンル分けのできない複雑な魅力をもつ作品でした。

 

『からくりからくさ』を異色作にしているのが、家の中心に座る「りかさん」の存在です。

蓉子が祖母からもらった日本人形で、幼いころから折に触れて彼女を助けてきた不思議な人形。りかさんに導かれるように、4人は自分たちに繋がる人々の過去をたどっていきます。

 

最後に、少し長いですが本文を引用して終わりたいと思います。

紀久が旅先から皆へ送った手紙の一節。私が「塩袋とギャッベ展」でめぐらせた見知らぬ女性たちへの想像が、くっきりとした文章で綴られています。

 

 

(前略)

 

一日の家事や野良仕事が終わった後、機に向かったのですから、心躍る楽しいことのあった日、切ない、悲しいことのあった日、怒りのこみ上げて止まない日、機の音は違っていたでしょうし、反物はそういうものに織りあがっていったのです。

 


女たちは機を織る。

 


反物という一つの作品に並行して、彼女たちは自分の思いのたけも織り上げていったのです。

 


古今東西、機の織り手がほとんど女だというのには、それが適正であった以前に、女にはそういう営みが必要だったからなのではないでしょうか。誰にも言えない、口に出していったら、世界を破滅させてしまうような、マグマのような思いを、とんとんからり、となだめなだめ、静かな日常に紡いでいくような、そういう営みが。

 


『からくりからくさ』梨木香歩 本文より引用

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

『からくりからくさ』機会があればぜひ読んでみてくださいね。

 

 

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*1:「ナマクダン」とも呼ばれる

*2:今回初めて知ったのですが「牛の塩好き」は有名だそうで……

*3:小説内で媒染剤についての描写も多く、ギャッベ展で「ロバの尿を使った媒染」もあると知り、へえ~となってしまった

思い出をたどる深川・清澄白河街歩き 花手水ブームがここにも!

梅雨の晴れ間に思い立つ 「そうだ、街歩きをしよう」

 

いろいろと行き詰まった6月半ば、スッキリしない気分の毎日が続きます。

こんなときには、ひたすら歩いて気分転換!

ちょうど深川の富岡八幡宮で花手水のトライアルをやっていると聞きつけ、週末に出かけてきました。

 

 

花手水(はなちょうず)とは

元々は水のない場所において、花や草木の露で身を清めること。

神社仏閣を参拝する際に手や口を清める手水舎ですが、現在は使用禁止の場所がほとんどです。柄杓は衛生面からNGとされ、流水で洗うのが一般的なようですね。

 

使われなくなった手水鉢に季節の花を浮かべて楽しむ。これがコロナ禍の「花手水」イベントです。

 

 

SNSへの写真投稿も追い風となり、ブームは全国へと拡がっています。いまの時期ですと、アジサイで埋め尽くされた水盤をネットで見かけた方も多いのではないでしょうか。

巷の流行がついに深川にも上陸。本格始動は10月とのことですが、これは見ておかないと!

 

富岡八幡宮 2022年6月

 

 

ちょっと曇り空ですが、そのぶん気温も湿度も控えめで散策には楽ちんでした。

 

富岡八幡宮は毎月フリーマーケットや骨董市を開催しています。ここ数年は行けずにいるので、近いうちに遊びにきたいなあ。

 

 

お目当ての花手水がこちら。

イベント終了が近かったため花が萎れているかな……と危惧していましたが、なんとか頑張ってくれていました! 夏に映えるビタミンカラーです。

両サイドの鳳凰の口から出るはずの水はチューブと竹筒を通して流れていました。格好よくはないですが、やむを得ませんね……。

秋は落ち着いた色合いの花でグラデーションを見てみたいです。

 

 

深川散策とむかしの話

 

せっかくなので門前仲町周辺もひさびさに歩いてきました。若いころの記憶がよみがえり、思いがけず感傷的に……。

 

駅前の和菓子屋「伊勢屋」のお食事処メニューがかなり品数を絞られたり*1と、コロナの影響を考える場面も多かったです。

しんみりした気分で聞く大音響の深川不動堂護摩修行は、いつにも増して全身の皮膚に染みわたりました落ちこんでいるときには本当にオススメ!

fukagawafudou.gr.jp

 

富岡八幡宮の骨董市といえば、作家の一点ものアクセサリーが出店していた時期があったのはご存じでしょうか*2手づくり市やハンドメイドマルシェが持て囃されるようになる、ずっと前の話。

 

当時バイトの関係で深川に立ち寄ることが多かった私。その日も通りかかり、骨董市が開催されているのを知りました。

興味深く見てまわっていると、小さなものを並べた机が目につきました。なんだろう?と近寄ってみれば、それは銀製のネックレス。店番の実直そうな男性が作家さんだとか。

 

男性作家の銀製アクセサリーというと、ゴツイ・デカい・髑髏なんてイメージありませんか?*3

 

私の偏見を笑うかのように、店先に並んでいたのはどれもシンプルなデザイン。

なかでも惹かれたのは長方形のプレート状のペンダントトップでした。

槌目加工というのか、金槌を打ち出来た凹凸模様がプレートをぐるりと囲み、左上には太陽モチーフが埋め込まれています。

プレートは上下でパーツが分かれており、そのため身につけて動くとわずかに揺れるのが絶妙。かわいい!!!!!

 

初見で、屋台で買うには高価な金額にもかかわらず、迷ったのは一瞬。一目惚れしたペンダントを大事に連れ帰ったのです。

嬉しさのあまり遠方の友達にイラストを添えて報告したりもしましたね……(電話やメールよりも手紙を好んだ時代)実際に会ったとき、お世辞でない感じで褒めてくれたのもいい思い出。

 

 

清澄白河→→深川 余裕があればハシゴするのも楽しい!

 

今回「歩いて気分転換」がテーマのため、スタートは清澄白河周辺でした。

 

「肉の田じま」 扇橋

 

まずは「肉の田じま」で揚げ物を購入。

ここ数週間、メンチカツが食べたくてたまらなかったのです。なぜか近隣の肉屋には丸っこくて分厚いやつしかなく……今風なんでしょうか、それとも地域性? 

小判型でやや薄い、慣れ親しんだタイプのメンチが食べたい!

 

 

無事に昔ながらのメンチ(玉ねぎ多めのソフトタイプ)が買えて満足。

こちらのお店、亀戸に新規オープンしたカメイドクロックに出店したりと、老舗でありながら攻めた姿勢なのです。

ホルモン系の種類も豊富なので、今度はもうひとつの定番・コロッケの他にモツ類も買ってみたいですね。

 

kotomise.jp

 

ブーランジェリー 麦彩

 

以前に美術展関係の記事でもご紹介したパン屋さん。ずっと再訪したくて、ようやく叶いました。

 

minorimainiti.hatenablog.com

 

 

お味しっかりめの総菜パンもいいですが、素朴なパンのほうが丁寧なつくりが際立ちます。

時間が遅かったので選べる種類が少ないなか、お気に入りのクリームパンはあって大喜び! 優しい甘さにホッとします。値上げが続くこのご時世、90円で提供してくれるのも嬉しい*4

くるみとチーズのパンも風味がよく、楽しんでいただきました。

また散策がてら買いにいきます~

 

読んでいただき、ありがとうございました! 深川・清澄白河訪問の機会があれば参考にしてくださいね。

 

お題「気分転換」

 

*1:現在は甘味と飲み物がメインで、あとは定食が数種類に

*2:最近もあるかもしれないけれど未チェック

*3:もちろん、どの層に向けた商品かで違う

*4:10円UPはしたようですが、元が破格なので……

さよなら、いつかまた会いましょう。今週のお題「本棚の中身」

我が家の本棚には、1軍と2軍がある。

 

失礼な呼び方だけれど、この分け方は「世間での評価や金銭的な価値」とは無関係です。

2軍本棚に入れるのは、好みに合わなかったもの、人から譲られたもの、役目を終えて今の自分には必要なくなったもの。

それらを処分するまえに、まとめて置いておく場所が必要なんです。本棚にあるうちは拾い上げることもできるでしょう? 手放してから後悔した経験が1度や2度ではないので。

 

アレどこにやったっけ?と探し、捨てたことを思い出す……

洋服でもやらかしますが、本での発生率も非常に高い。気づいた瞬間のガックリする感覚といったら……。

 

蔵書の整理って、ほんとうに時間がかかりますよね無限に!

読み直すし、なんなら座り込むし、どんな場所でページを開いたかの思い出までついてくるし。

面白くなかった本でも、どこがどうダメだったのか、自分に刺さるのはどんな展開だったかと考えると興味深い。もらった本なら相手の趣味がうかがえて楽しい。「役目を終えた」本を前にすると、つい感傷にひたってしまいます。

 

けれど、選別作業は紙の本を好むなら避けては通れません。

なるべく事務的に進めたい!と編み出した(というほどのものではない)のが、本棚チーム分けスタイルでした。読書好きにはわかってもらえるのではないでしょうか。

 

 

不思議ですね。ここまで厳選して残す本を決めているのに、後悔するケースが絶えないのです。

私の場合「今は読みたくないな」と忌避した作品に、遅まきながらハマることが多いです。

目をそらしたくなる要素が含まれると本能的にわかるのでしょう。たとえば自分の弱点とか、軽視してきた何かとか。

 

 

ちなみに2軍の本棚の中身は①売る ②欲しい人に譲る ③資源ゴミとして処分……とそれぞれの運命をたどります。

時節柄③がどうしても多いのがツラい。

 

せめて最後まで楽しませてもらおうと、お風呂に持ちこんだりしています。

入浴しながら読書、最高だけれど紙派にはなかなか出来ませんから!

 

 

最近書いた読書感想の記事です↓↓↓minorimainiti.hatenablog.com

minorimainiti.hatenablog.com

 

過去お題「読書の秋」↓↓↓

minorimainiti.hatenablog.com

 

今週のお題「本棚の中身」

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

たとえ世界から置いていかれても 『団地のふたり』読書感想

読書感想 2022年6月

『毎日を楽しく暮らしたいのんびり者です』

これは私のプロフィールの書き出し部分です。

実際は日々悩み、あくせくと暮らしている身ですので、綺麗ごとすぎるかなぁとも思うブログコンセプト。しかし、けっこう気に入っています。

現実より背筋を伸ばした自分で文章を綴る。そうすることで物事の違う側面が見えてくるのは、ブログを始めなければ知らずにいたでしょう。

 

理想として掲げるのは、現状が追いついていないから。

だからこそ理想を体現している人には羨望半分、それホント?と疑う気持ち半分の心情です。相手がフィクションの世界の住人であっても。

 

 

今回ご紹介する団地のふたり』の登場人物は、絵に描いたような「のんびり生活」を送っています。

 

のんびり生きたいけれど、凡人にはとても難しい。

そもそも現代の日本でそんなこと可能なの?

 

あらすじを読んでまっさきに浮かんだのが、こんな問いかけ。

疑問を抱えつつ手にとった本作ですが、あっという間に読み進み、読後感は不思議なほど爽やかでした。私と同じタイプのひねくれた方に読んでほしい小説です!

 

団地のふたり』 藤野千夜

 

なっちゃんとノエチ、ふたりは保育園時代からの幼なじみ。

 

華やかなイラストレーターの仕事にあぶれ、フリマアプリの取引やなんでも屋で稼ぐなっちゃん

大学の非常勤講師で、人間関係に悩んでは親友の家に入り浸るノエチ。

人生それなりに山あり谷ありだったけど、現在は生まれ育った団地に帰り、まったりと暮らしている。

 

昭和の遺物のような団地は建て替え計画が進行中。住人も減っていく一方だ。

でも、彼女たちに悲愴感は全然ない。

早逝したもうひとりの親友・空ちゃんの思い出が残るこの団地は特別な場所。

 

通販サイトで頼んだ野菜を半分こしたり、隣人からの頼まれごとに奮闘したり、ときには自転車で遠方まで出かけたりと毎日あれこれ忙しい。

 

特別なことは起きないアラフィフ女性ふたりの日常を、ユーモアたっぷりに描く。

 

 

あらすじをまとめてみたら、けっこうショボい……「理想」とは……?

 
 
奈津子さんも野枝さんも、周囲から憧れの目で見られるタイプではありません。どっちかというとダメダメ。
 
堅実にキャリアを重ねているわけでなく、かといって人生を達観してもいない(食生活は質素だけれど)。
 

私はフリマアプリ類を利用しないので、近所の人から持ちこまれる品々をさばくなっちゃんに「古物商許可いらないの?」と余計な心配をしつつ読んでいました。

作者の藤野千夜さんがマンガ雑誌の元編集者だったせいか、扱われる品にはノエチの買った同人誌もあったり。

リアルだけれど、女性オタクとトラブルにならないよう気をつけてね……!*1

 

なっちゃんたちのお気に入りはTVの断捨離番組なのですが、好き勝手に感想を言い合うばかりで実家の整理は遅々として進んでいません。家族がまだ元気だから良いものの、数年後にはどうなることやら*2

 

50代でも隣人からすれば断然若者、次々にお願いごとが舞い込みます。ぼやきながらも新しいことを覚えるのに新鮮な喜びを覚えるなっちゃんとノエチ。

 

ふたりの暮らす団地は昭和30年代半ばの建設と古く、昔遊びにいった親戚の家を思い出しました。

時代に取り残されて、ゆっくりと沈んでいく故郷は時間の流れがここだけ違うかのようです。

けれど、不思議と彼女たちに悲愴感はありません。はるか昔に亡くなった空ちゃんが、この空間を守っているみたいに。

 

『誰がどういう悪口言うのかも、もうわかってるけど』

 

向上心がないとお叱りを受けそうなふたり。

実際その通りだとは思います。年齢からすれば親の介護が始まっていたり、亡くなっていてもおかしくありません。運よく家族が元気でいるから、いつまでものん気でいられるのだと*3

 

 

でも、彼女たちにはとても素晴らしい美点があります。

自分と他人を比べたり、嫉妬したりしないんですよね。

なっちゃんイラストレーター仲間が成功すれば素直に喜び、ノエチとふたりでお祝いにいく。ちらっと登場する男友達も妬み嫉みとは無縁の印象でした。

恵まれた人生を送っていても簡単ではないと思います。
 
 
『誰がどういう悪口言うのかも、もうわかってるけど、いいよね、そういうの』
ノエチが呟いたこの一言が、ふたりの人生の乗り越え方なのでしょう。
 
 

 

出会った保育園時代からお互いに色々なことを経験して、今また団地の一室にいるふたり。
この40数年なんて存在しなかったように。
建て替えを遠くない未来にひかえ、ふたりも家族も確実に老いていきます。
空ちゃんが守ってくれていると書いたけれど、それだって永遠には続かない。

 

でも、なっちゃんにはノエチが。ノエチにはなっちゃんがいる。
それならば、きっと大丈夫だと思えるラストでした。
 
 
興味があれば手にとってみてくださいね。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
 
 
 

*1:二次創作の場合、高額転売や同人誌に詳しくない一般ファンとの棲み分けの都合上、フリマアプリへの出店はかなり嫌われる

*2:身に覚えがあり、心が痛む

*3:ふたりが実家に戻ったのは親の心配もあるだろうし、なっちゃんの母親は親戚の介護で帰省中なので問題に無縁なわけではない