行った、見た、感動した! 「わたしの2022年」美術館めぐり【特別お題】
<景品表示法に基づく表記>当ブログ内の一部記事にはプロモーションを含みます。
特別お題「わたしの2022年・2023年にやりたいこと」
2022年秋、ひさしぶりに「ぐるっとパス」を利用して、興味ある美術展に行きまくりました。
しかし、最初に利用した日から2か月という短い期間であちこち回るのは、予想以上に大変……。おかげで「せっかく出かけたのに、ブログが書けない」不完全燃焼な状態に。
今回2022年の総括ができるお題があると知り、自分の日記も兼ねて投稿することにしました。
最後まで読んでいただければ嬉しいです!
※今期の販売は1/31までです! 最終有効期間は3月末と短いので、興味のある方は次年度で買ったほうがいいかと……。
『フィン・ユールとデンマークの椅子』展 東京都美術館
デンマークのデザイナーであるフィン・ユールの美しい椅子の企画展。
彼を生み出したデンマーク家具デザインの歴史も作品とともに紹介されており、知識がない私でもデザイナーごとの作風を楽しめました。
都美術館のギャラリーは毎回ちょっと変わった企画をしますね。以前記事に書いた『BENTO おべんとう展』もおもしろかったです。大行列の特別展より、記憶に残ることも多いかもしれません。
広々とした展示室に椅子がずらりと並びます。これだけ勢ぞろいすると壮観。
「ラケットチェア」命名通り、椅子の背にラケットのガットのようなものが張ってあります。座りにくくないのだろうか……。
下の写真はフィン・ユール作のソファ。
どんなに美しいデザインでも、家具はあくまでも実用品。フィン・ユール展では実際にデンマークの椅子に座って、そのデザインを体感する試みも行われました。しかも、太っ腹にひと部屋まるまるがお試しスペース!
これが楽しかったですね~!*1(座りながら「このソファ、買ったらおいくらだろう……」との気持ちがよぎりましたが)
やはり眺めるだけと使ってみるのでは、感想がまったく違います。座り心地がいい椅子はリピートする来場者も多く、空くのを辛抱強く待ったりしました。
ちょうど藝祭も開催中! しかしチケットは取れず……
しかしコロナ前とは違い、時間ごとの定員制&チケットは即売り切れ……。
敷地内にも入れなかったので展示はもちろん、迫力満点の手づくり御輿*2も見られませんでした。毎回楽しみにしてるんですが、こればかりは仕方ない。
そのかわり、学生さんたちが出店するアートマーケットはのぞいてきました!
法被姿の藝大生もちらほらと。御輿と同じくらい、学科ごとに違うデザインの法被を見るのも楽しみのひとつ。行きそびれたお祭りの空気を感じて嬉しかったです。
【2022藝祭御輿公開‼️】
— 藝祭2022 (@geisai_koushiki) September 2, 2022
2022藝祭の神輿をついに公開!!!
御輿パレードは11:00開始予定👊#藝祭2022#藝祭でふれる pic.twitter.com/guMxJFdTea
[御輿・法被パフォーマンス]
— 藝祭2022 (@geisai_koushiki) September 2, 2022
御輿・法被パフォーマンスの様子を覗き見👀
どの隊も「ふれる」から連想した御輿法被を存分に表現してくださいました👏
これより藝大へ戻ってきます🫧#藝祭2022#藝祭でふれる pic.twitter.com/XYDRf0GLMb
他の手づくり市と比較すると、自分の絵をプリントしたTシャツやトートバッグ、手染め製品などが多い印象です。定番のポーチといった布もの?は見かけず。
『キース・ヴァン・ドンゲン展』 パナソニック汐留美術館
キース・ヴァン・ドンゲン。フォーヴィスムや、海外美術館の所蔵作品としてよく出会う作家。
彼について、名前は知っていても「色彩も線もくっきりと鮮やかな、女性像が多い画家」くらいのイメージしかありませんでした。
その通りではあるけれど、ひとりの作家を年代順にみると捉え方は変わりますね。
女性の肌の表現が多彩で、とても印象に残りました。
輪郭を赤で強調すると血色のよさが際立つ。
逆に黄色みを多くすると、人工的な光源にさらされてる感じ→都市部のブルジョワをたくさん描いた画家なので、意識的かも?
……などなど、女性像へのこだわりに注目しつつ鑑賞。
花瓶に生けた花をはじめとした静物も好きです。
『メメント・モリと写真』展 東京都写真美術館
マリオ・ジャコメッリ『やがて死がやってきてあなたをねらう』
恵比寿ガーデンプレイスの夜景。
ラテン語で『死を想え』を意味するメメント・モリを題名とした収蔵作品展。
スマホで気軽に撮影できる世の中だというのに、私は芸術としての写真は見方がいまひとつわかりません。
作品の好き・嫌いすら、はっきりと感じることは稀。考えてみると不思議な話です。
しかし、今回はどうしても行きたかったのです。
なぜなら、マリオ・ジャコメッリの写真が見られるから!
マリオ・ジャコメッリ 【白、それは虚無。黒、それは傷痕】
この写真家の名前を覚えたのは2013年。場所も同じ、東京都写真美術館でのジャコメッリ展でした。
降りしきる雪のなか、輪になって踊る若き聖職者。彼らの呼気が冷たく澄んだ空気に溶けていく。黒と白の強烈なコントラスト、それでいて静けさを感じるメインビジュアル。
『神学生たち(私にはこの顔を撫でてくれる手がない)』『死がやって来ておまえの目を奪うだろう』*3『ルルド』──独特の詩的なタイトルにも惹かれました。
しかし当時の私は「写真なんて全然わからないし……」と、常設展だけ鑑賞して帰ってしまったのです。現地に!! いながら!!!!!
やはり写真の知識はゼロにもかかわらず、一緒にいた母が興味をもって見にいきました。合流後、とっても良かったと大絶賛。後ろ髪をひかれつつ帰宅しました。
時間とチケット代をケチったために大事なものを見逃した後悔は、写真集や特集記事に触れるたびに大きくなり、次の機会をうかがって約10年。
今回、長いあいだ焦がれた作品に(数点とはいえ)対面できて、ちょっと胸がいっぱいになりました。また大回顧展やってほしいなあ。
※冒頭にリンクを張った記事は2013年の展示についてですが、たいへん素敵だったので興味のある方はぜひ! 写真もたくさん掲載されています。
ウジェーヌ・アジェ、ダイアン・アーバス、東松照明(とうまつしょうめい)など
ジャコメッリの他に気になった作家の覚え書きです。
☆藤原新也
新聞の連載で名前は知っていたものの、作品をきちんと見るのは初めて。
インドで撮影した野犬に喰われる遺体の写真はギョッとしました*4
自分の好みとは少し違う。しかし、印象的なタイトルや添えられた文章から一時代を築いたのは想像できました。
☆東松照明(とうまつしょうめい)
長崎で原爆の残した爪痕を撮影した作品群に魅入られました。
一目見たら忘れられない作品『熱線と火災で溶解変形した瓶』よじれて歪にのびきった瓶は、まるで人間の内臓のよう……。鑑賞するのに覚悟のいる作風です。
☆ウジェーヌ・アジェ
こちらは竹橋の近代美術館でもよく展示されているアーティストです。
私のなかのアジェのイメージは、人影のない、白昼夢のようなパリの街並みを淡々と撮り続けた作家。
神秘的なその作風は、彼のキャリアが「画家向けの資料として写真を撮る(そのため早朝の人っ子ひとりいない街を撮影した)」ところからスタートしたためです。
でも、今回のパリの街には人が写っていましたね。これはこれで好き。
写真に疎い私でも、有名な一卵性双生児の少女の写真は知っていました。
映画『シャイニング』の双子はこの作品へのオマージュだとか。
身体的・精神的に「普通」とは著しく異なる【異形の人々】をモデルにした作品で知られたそうですが、今回の展示は印象が違いました。
寝室で着飾った未亡人の顔は感情がすっかり抜け落ちたよう。
華やかな表面からはわからない、一瞬の虚無を切り取ったような作品が多かったです。
『アーツ・アンド・クラフツとデザイン展』 府中市美術館
府中美術館には以前『ウィリアム・モリス展』で来たことがあります。
本展と共通する作品も多く、この手の企画を頻繁にやるんだな~と開催年を見てみると、なんと2013年! あれっ……そんな昔……?
タイトルの「アーツ・アンド・クラフツ」とは、19世紀イギリスで始まったデザインの革新運動。
工場での大量生産による粗悪品が氾濫する世の中に対し、伝統的な手仕事を見直し、美しく使いやすいデザインの品で暮らしを彩ろうと提案するムーブメントです。
撮影不可だったため、看板やディスプレイで伝われ雰囲気……!
☆いままでモリスのデザインを単純にキレイ、可愛い♡と思ってきたけれど、しっかり鑑賞してみたら、意外に力強く野性味があると気づきました。鳥のデザインなどで顕著です。
有名な『いちご泥棒』はインディゴ染めなのか~というのも今回の学び。褪色したのか、生い茂る蔓の印象が強いせいか、てっきり全体も緑色に染めてると思ってました。
☆モリス以外でたいへん気に入ったのが、チャールズ・F・A・ヴォイジーの作品。シンプル、かつあたたかみのあるデザインで可愛い!
『小鳥』向かい合った小鳥と釣鐘型の花が、遠目には混ざって小紋柄のように見える絵が面白かったです。タイルのデザインも素敵でしたね。
☆ジェシー・マリオン・キング
初めて知った挿絵画家。細くて繊細な線、ロマンティックな作風が印象的でした。展示がもう数点あると嬉しかったなあ。
☆世代を超えて大人気、「リバティ・プリント」のリバティ商会も数多く展示されていました。
プリントがたいへん有名ですが、今回はアクセサリーや食器なども紹介されていたのが新鮮。装飾品はエナメルで彩色が施された品が目につきました。鮮やかで華があるのに、比較的安価だったからでしょうね。
リバティ商会はブランドカラーを強めるため、作家名は基本明かさない方針とか。名も知れぬ職人たちの技に息をのみつつ、じっくり鑑賞してきました。
豆知識 商標登録はこんな時代からあったそうで……思ったより早い!
解説が非常にわかりやすく、そのためアーツ・アンド・クラフツ運動に関わる芸術家の大量生産品への敵愾心も想像することができます。
美しさにこだわれば、製品の値段は当然あがる。運動は高く評価されつつも、やはり工業化の波は避けられなかったようです。さぞもどかしい気持ちだったことでしょう。
しかし「少数のための芸術はいらない」が理念ならば、機械化が進むのは当然のこと。
機械で作られたシンプルなデザインにも美を見出すことで、モリスの理想は次世代に伝わっていきます。当初の方向とは違っても、想いは受け継がれる──幸せな運動だと思いました。
グッズが充実! お土産の一部です。
オレンジ色のしおりは、美術館の企画で作成したもの。好きなデザインのスタンプを押すだけですが、こういうちょっとしたお楽しみがあるとテンションあがりますね。
ちょうど無料観覧日だったため、子どもたちも多く訪れていました。なのに驚くほど静かで、ちょっと戸惑った私。騒ぐのは論外として、親子鑑賞会をやってる美術館もあるし、児童が多い特定の日は多少のおしゃべりは許容範囲と思っていたので……(感想を言い合うことで興味を育てる面もありますよね)
わざわざ見にくるからには、もともと美術館好きなのかもしれません。しかし黙食の影響もあるのかなあと、しばし考え込んでしまいました。
『装いの力 異性装の日本史』 渋谷区立松濤美術館
SNSで若者を中心に話題になった展覧会。Twitterなどで目にした方も多いのではないでしょうか。
少女マンガと相性がよく題材になることが多いため、私自身も楽しみにしていた企画でした。
敵を欺くため女性の装束をまとったヤマトタケルや『とりかへばや物語』、戦場で刀をふるう女武者から始まり、歌舞伎などを紹介しつつ近代~現代のゲイカルチャーや舞台、マンガにおける描写まで。
『ベルサイユのばら』の原画や、『リボンの騎士』『ストップ!!ひばりくん!』の複製原稿も展示されていました。
開催を心待ちにしていたとは言いましたが、実はちょっと気が重くもありました。以下は展示とは直接関係のない、個人的な感想です。
男性か女性か—人間を2つの性別によって区分する考え方は、私たちの中に深く根付いています。しかしながら、人々はこの性の境界を、身にまとう衣服によって越える試みをしばしば行って きました。社会的・文化的な性別を区分するための記号である衣服をもって、生物学的に与えられた性とは異なる性となるのです。(中略)
男らしさ、女らしさとは何なのか。日本における異性装の系譜の一端を辿ることで、それらがどのように表現されてきたのかということを探り、「異性装」という営みの「これまで」と「これから」について考えます。
「装いの力──異性装の日本史」公式サイトより引用
美術展のコンセプトを読んで私がまっさきに思い描いたのは、子どもたちが好きな色を選べるようになったランドセル、もしくはスカートの裾をひるがえす男性像。
男の子(女の子)だからダメ、女性(男性)ならこうするのが当たり前。そういった枷から誰もが解き放たれ、好きなものや好きな人を堂々と愛せる世界へと向かうこの時代にピッタリな展覧会だと思ったのです。
しかし現状を調べていくごとに、そんな考えはのんきすぎたのかもしれない……と暗い気持ちに。
私が想像していたよりもずっと「男性」らしさ、「女性」らしさの枠組みは強固でした。さらに、その高い壁を乗り越えようとする運動にも過激な流れがあると知り、ひたすら困惑……。
価値観がガラリと変わる過渡期に人々の対立はつきもの。とはいえ、現代はSNSなどで諍いが目に見えるのでしんどいですね。
テーマを深掘りして勝手にダメージを受けたりしましたが、展覧会自体は(身構えたような)先進性・多様性を過剰に押しだすものではなく、楽しい内容でした。
唯一写真OKだった撮影スポットでは、こんな遊び心も!
華やかに着飾ったドラァグ・クイーンのみなさん。フラッシュで撮影すると……? ↓↓↓
松涛美術館は小さい建物ながらいつもセンスのいい企画をしてくれます。今回も難しい題材だったことでしょう。これからも足を運びたいアートスポットです。
『南桂子展 透き通る森』 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション
南桂子は詩情あふれる作風で知られた銅版画家。哲学的な風貌の少女や素朴でかわいい鳥のモチーフは、多くの人から愛されています。
夫である版画家・浜口陽三の作品を展示するミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションでは、定期的に彼女の作品展を開催しています。今回、小説家の小川洋子セレクションの南桂子作品が展示されると聞き、そちらも楽しみに向かいました。
美術館は人形町駅から徒歩10分ほど。地下鉄から地上に出たとたん、ものすごくいいほうじ茶の香り! お茶屋さんをはじめ、甘酒横丁はおいしそうな食べもの屋が多いので、散策する時間もとれると楽しいですね(私は最終日、かつ時間ギリギリだったため店を横目に走りました……)
手前のスペースは併設のカフェ。ヤマサの黒蜜風醤油を使用した自家製バニラアイスが季節のアイスと共にいただけるそうです。
小川洋子さんが南桂子作品を好んでいるの、すごく納得しました。モチーフは静かで愛らしいのに、どこか底知れない感じが小説のイメージにぴったり(何作も読んだわけではないけれど)
繊細なタッチはこぎん刺しといった刺繍を連想します。そこも気に入ったポイントかもしれません。
浜口陽三の版画も何点か展示されていました。
かつて吉祥寺美術館(浜口陽三記念室)で鑑賞したサクランボの絵は衝撃的でした。暗がりから滲み出てくるような色彩に、版画でこんな表現ができるのか!と驚いた記憶……。
暗い色調の作品が、光の反射ですこし見づらかったのだけが残念です。
下の写真は「表紙部分をくり抜いた本に、南桂子のポストカードを入れて自分だけのデザイン本を作ろう!」というお楽しみ企画。
私はお屋敷から遠ざかる鳥の絵を選びました。
題名も自由に書き込めたのですが、恥ずかしいのでスタンプぺたり
こちらの「青い日記帳」さんの記事は2021年の南桂子展について。コロナ禍で疲弊するなか、南桂子作品を鑑賞する意味を丁寧にレポートされています。
『秋のバラフェスティバル』 旧古河庭園
春に続いて、行ってきました旧古河庭園!
「秋バラは春バラと比較するとやや小ぶりの花がつく」との話でしたが、ちょうど見頃だったためか、十分に美しく目を楽しませてくれました。
今回のお目当てはバラの他にもうひとつ……
それは洋館前の広場で開催されるクラシックコンサート!
29日土曜日は「秋バラの音楽会 #弦楽四重奏」!12時からと15時から、各回約30分です。(雨の場合は中止です)秋バラも見頃で当日を迎えられそうです。バラとともに優雅な音楽もお楽しみください♪#旧古河庭園 #バラ #ツイッターで楽しむ庭園 pic.twitter.com/5kwIB1jasY
— 旧古河庭園 (@kyufurukawa) October 26, 2022
ひつじ雲というのでしょうか。青空との対比が信じられないほど鮮やかで、そんななかで演奏される弦楽四重奏。思いがけずファンタジックな体験をしてしまいました。
選曲はディズニー2曲、カノン、ベッド・ミドラーの『The Rose』(いちばん良かった)、あとは『鎌倉殿の13人』、葉加瀬太郎作品など。
演奏会は定期的に行われているようです。予定さえ合えば、是非また参加したいですね。
長~い記事、読んでいただきありがとうございました!
大寒波が各地を襲うここ数日。
けれど、春はもうすぐそこです。あたたかくなったらどこへ行こう? 2023年も(ペースはぐっと落としつつ)素敵な美術展と出会えたらいいなと思います。
こちらの記事もぐるっとパス利用で訪れた美術展↓↓↓