【今週のお題】『るきさん』とお風呂 【読書感想】
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今週のお題「お風呂での過ごし方」
丸一日、お風呂場で過ごしてみたらどうなるだろう。
浴槽のフタを机代わりに仕事をし、本を読んだり、食事もお弁当をつくって毎食きちんととる。トイレだけは例外として、夜は布団を持ちこんで就寝(背中とお尻が痛いのは我慢しつつ)。
そんな体験も面白いかもしれない……なんてことを考えたのは、残念ながら私ではありません。
マンガ『るきさん』の主人公が湯船につかりながら思いついたこと。
結局るきさんは実行しないのですが、気が向かなかっただけのように思います。マイペースで飄々とした彼女は、もっと驚くようなやり方で毎日を楽しむ達人なので。
そんなるきさんの生活が淡々と綴られる1篇15コマ、フルカラーの作品です。
『るきさん』高野文子
るきさんは大人だけれど、春だからスキップする。雨続きで洗濯した服がなくなったら、肌着にレインコートだけで買い物にいく(ぜんぜん不便はない、とのこと)。図書館の談話室では焼きそばパンとコーヒーを頼むのが定番、独身なのに子持ちと間違えられたり、ときどきナンパにあったり。その姿はどこまでも軽やかで楽しげです。
掲載は1988~1992年、世の中はバブルのまっただなか。そんな時代に在宅のお仕事をこなしながら余暇は図書館に通い、趣味は切手集め……という地味なライフスタイルはどう受け止められたのでしょうか。
いわゆる丁寧な暮らしとも違う「るきさん流」としか表現できない世界は、だからこそ長く読者に愛され続けています。
るきさんと、お友達のえっちゃん
のんびりなインドア派るきさんとは正反対。毎日会社に通い、動作にテキパキと音が入りそうなしっかり者で、後輩の男の子を密かに気にする可愛らしさもある女性。流行にも敏感なため、おしゃれに無頓着な友人をバーゲンに連れ出す場面もありました。
作品の主軸となるふたりの関係がなんとも素敵なのです。
こういった浮世離れしたキャラクターが主人公の場合、周囲は彼女(彼)になにかしら影響を受ける展開が多いのではないでしょうか。もちろん、えっちゃんも例外ではありません。恥ずかしいじゃなーいと言いつつ、るきさんにつられて街中でスキップしてみたことも。
でも、あくまで「私は私」のスタイルなんですよね。自分とはかけ離れた友人の挙動をあきれたり面白がったりしながらも、私は私。その距離感がとてもいいなぁと読んでいました。
お互いの誕生日に家事いっさいをプレゼントしあうのは象徴的なエピソードです。
立ち働くえっちゃんを横目にお誕生日のるきさんは座布団を枕にゴロゴロ。
「しあわせー」
「ねっ、いい案だったでしょ」
「でも、明日ののしらない?」
「ののしらないよ」
るきさんとえっちゃんの会話に思わず頬がゆるみます。大人ふたりがこんなやり取りをできるって素敵。
ゆるく確かな友情で結ばれた日々が読みたくて、私は何回もページをめくるのです。
そういえば、もうひとつお風呂が出てくる話がありました。
冬のお風呂場が寒かったるきさん、シャツのいちばん上のボタンを外し、肌着とセーターも一緒に3枚くるっと裏返して脱ぎ湯船に直行します。ウラオモテが逆の状態で部屋にちんまり置かれた洋服。そこに立ち寄ったえっちゃんは何かのおまじないかと思い服には触らず、ゆっくり友人がお風呂からあがるのを待ちます。
場合によっては家族の怒りを買う行為でしょうが(洗濯するときの手間!)作家さんの画力と明るいカラーのおかげで「なんだか、あいらしい」光景に。
おまじないという発想や言葉選びが新鮮で、とても好きなエピソードです。
複製画とオリジナルグッズ情報【蔦屋書店】
今年9月には、銀座の蔦屋書店で複製画とオリジナルグッズの展示販売会があったそうです。まだ通販では取り扱っていますので、興味がある方は下記サイトからどうぞ。
余談ですが、今回「外食でややこしい注文システムに困惑し、小銭を数えるのに気をとられ札を出すの忘れた」エピソードを読み返し、あぁそれ最近やったわ!となりました。お金だけ払って商品を置き忘れることもあります。一瞬(いまのは『るきさん』っぽいな)と喜ぶものの、真似したいのはそこじゃないんですよね……。
のんびり暮らしを標榜しながら、まったく彼女の領域には至れない私です。