みのりブログ

毎日を楽しく暮らしたいのんびり者です。

スイーツ&謎解き!『ときどき旅に出るカフェ』『みかんとひよどり』読書感想

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読書感想 2022年 3月

ついに無くなってしまった。年末に買い込み、大事に食べてきたチョコレートウエハース。先ほど食べたのが最後の1個だったのです。新しく買おうにも店舗・通販ともに売り切れで、入荷はおそらく次の冬……。

 

未練がましくパッケージを眺めていると「原産国名・オーストリアの表記に気づきました。

購入したのはカルディコーヒーファーム国内外の美味しそうな食べものにあふれる店舗は、いつ行っても楽しいですよね。

とくに輸入食品はカラフルな包装や予想外の組み合わせに驚くことも。食文化から世界に思いを馳せて、ちょっとした旅行気分になれます。

 

知らない料理は知らない世界への扉を開く第一歩。

今回ご紹介するのは、そんなテーマで選んだ小説2本です。

 

『ときどき旅に出るカフェ』 近藤史恵

 

30代後半、独身で恋人なし、ひとり暮らしの主人公・瑛子。

将来を考え不安になることもあるけれど、頑張って購入したマンションの一室は彼女の小さな城だ。

 

幸福ですこし憂鬱な毎日のなかで、ふと立ち寄った近所のカフェ。

ミント水にざくろ水、呪文のような名前の外国のお菓子……一風変わった品が並ぶ店に瑛子は魅了される。

 

「奈良さんですよね?」

そう声をかけてきた女性店主は、数年前に瑛子の会社を辞めた後輩だった。

 

【旅に出られるカフェ】で繰り広げられる、あたたかなコージーミステリー。

 

 

目次ページを開くと食べものにまつわる各章タイトルが目をひきます。

「苺のスープ」「ロシア風チーズケーキ」「おがくずのスイーツ」「鴛鴦茶(ユンヨンチャー)のように」──

 

なじみのあるスイーツはほとんど登場しません。それもそのはず、舞台となるカフェ・ルーズは【お客さんに旅を感じてもらう】がコンセプト。店主である円(まどか)は月初めの1週間店を閉め、日本や世界各地を飛びまわり、食材やレシピの収集に励むのです。

 

円がつくるスイーツの美味しそうなこと!

新鮮な驚きに満ちた描写に思わずメニューを検索した読者も多かったのでしょう。登場するお菓子を調べると、関連キーワードにずらっとカフェ・ルーズの料理名が……(チェックするの楽しいですよね、わかるわかる)

おおざっぱでお菓子作りなんてムリ!な私にレシピを検索させたのも、作者の表現力の高さゆえ。

とくに食べてみたくなったのは定番商品のロシア風チーズケーキこと「ツップフクーヘン」ベイクドチーズケーキにココア生地をまぜたものだそう。

生クリーム×コンデンスミルク×ビスケットの素朴なポルトガルスイーツ「セラドゥーラ」も美味しそうで目移りします。

 

 

甘いもの、美味しいものが好きな方におすすめな本作は「女性のための物語」としてもしみじみとした余韻を残します。

訪れるすべての人にあたたかい空間を提供してくれるカフェ・ルーズ。瑛子の持ちこむ謎をいつも解決してくれる円ですが、後味がいい結末ばかりではありません。

そこで描かれるのは年齢も立場もさまざまな女性たちの人生。

声高に共感を主張するわけではない。たまたまカフェで隣あった他人の話を聞くように、そっと彼女たちに寄り添う瑛子と円の姿勢が作品を貫いています。

 

いろいろな読み方のできる『ときどき旅に出るカフェ』興味のある方は手にとってみてください。作品内の料理を再現したサイトも数多いので、読了後に巡ってみるのも楽しいですよ!

 

book.asahi.com

【とっておきのヨーロッパだより】知ってるようで知らない、カフェ・グルマンをいかがですか?|<mr:var name="catlabel" />|食のコラム&レシピ|辻調グループ 総合情報サイト


『みかんとひよどり』 近藤史恵

 

 

近藤史恵さんの小説からもう1本ご紹介します。

食がテーマということで選びましたが、奇しくもこちらは男性キャラクターがメインでした。題材はガラッと変わってジビエ料理。こちらもまた面白いんです。

 

 

11月の冷たい雨の降る山中、フレンチシェフの亮二は愛犬と遭難していた。

 

なにもかも上手くいかない人生。

自分の店は潰れ、窮地を救ってくれたオーナーはなぜかジビエ料理に執着する。慣れない猟に出かけた結果がこれだ。

 

諦めかけたそのとき、亮二はひとりのハンターに助けられる。

世捨て人のように暮らす男だが、狩猟の腕は抜群だった。

 

店の経営状況は崖っぷち、起死回生の策として男と組むことを思いつく亮二。しかしアッサリと断られてしまい……。

 

 

ジビエ料理とフレンチ。

私の知識不足でイメージがつかめない部分も多く(ゴールデン〇ムイの影響で狩猟ブログに一時期ハマった程度)そのぶん料理より人物描写に惹かれた作品でした。

 

留学先では優秀だったのに帰国後は結果を出せず、鬱々とした日々を送る亮二がのっけから暗い。しかしハンター・大高と出会い、野生動物の肉と向き合って料理を考えるうちに、少しずつ彼のなかの何かが変わっていきます。

 

大高の描き方がまた良かったなあ。いわゆる「仙人」ポジションのキャラクターって過剰に持ち上げられることが多い気がしませんか? かといって、世間の常識にすんなり迎合してしまうのも不自然です。

「面倒なことに関わっている時間はない」

大高のつっけんどんな言葉にどんな意味がこめられていたか、読者は本を閉じたあと何度も考えることでしょう。

 

亮二には亮二の、大高には大高の自由と信念がある。それが冬の夜空のように凛とした読後感となっていました。

 

犬好きで知られる作家さんなので登場する愛らしい犬たちも要チェックです!

犬と一緒に暮らすということ――『シャルロットの憂鬱』刊行エッセイ 近藤史恵 | エッセイ | Book Bang -ブックバン-

 

近藤史恵さんの作品は過去にも感想を書いています。

minorimainiti.hatenablog.com

 

 

ちなみに……私が冒頭で食べていたお菓子はこちら!

 

カストナー チョコレートウエハース (はよ再販して~~!!!)

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『ときどき旅に~』ではカレーも登場しますが、最近のお気に入りがこの商品。

果実のまろやかな甘さとスパイスが効いており、味のバランスが絶妙! ひよこ豆粉を使っているせいか、しっかり食べても胸焼けしないのが嬉しいです。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!