Twitter始めました&『宇野亞喜良 万華鏡』展に行った話(準備号)
『みのりブログ』のTwitterアカウントを作ってみました
もうちょっと、気軽にブログが書けるようになりたい!
文章を書くことに対して、どうにも気負ってしまう自分がいます。
イベント関連も扱うため不正確な情報などはNGですが、あまり考えすぎず、思いを素直に綴ってみるのもブログの醍醐味ではないか……と悩みつつ開設1年半。
気軽にというのはやっぱりハードルが高いなぁ。趣味のTwitter(オタク)アカウントですら、連投したり数週間浮上しなかったりと波があるし……とそこまで考えてハッとなりました。
そうだ、Twitterだ!!
使えそうなツールはなんでも利用してみようの精神で、ブログの宣伝用アカウントを開設しました。
宣伝アカといってもまだ手探りでの運用なので、いたって暢気なものです。更新報告と、今度ブログに書く予定のネタをちょろっと披露する程度。発信メインで交流もしていません。
たとえばこんな感じ↓↓↓
ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催されていた『宇野亞喜良 万華鏡』展へ行ってきました
— みのりブログ (@minoriblog_info) January 31, 2023
※会期は終了しています
1階は特殊印刷を駆使した作品が並んでおり、印刷でこんなに印象が変わるものなんだ……!とびっくり(さすがDNP運営) pic.twitter.com/lPXWQi5KkX
宇野亞喜良展への感想はそのうち掲載する予定です。
「このブログ、美術展の趣味は合うんだけど更新がいつも期限ギリギリなんだよなあ」
「もうちょっと情報早く知れたらイベントに行けたのに……」
そんな残念な思いをされた読者さん(ほんと申し訳ありません!)がいらしたら、ぜひTwitterのほうをのぞいてみてください。ブログよりはずっと早く情報出せると思うので。
実は昨年末に開設してました↓↓↓ せっかくの素敵な企画展、少しでも情報拡散したかった
撮影可だったのでお気に入りの写真をいくつか
— みのりブログ (@minoriblog_info) December 11, 2022
4枚目のみ常設展の展示品です
展覧会は12/17(土)まで
アクセサリーミュージアム、小さな美術館ですが見応えありますよー✨✨ pic.twitter.com/l7zYrRxSSh
フォローしなくても、気が向いたとき閲覧するだけでOK。どなたでもどうぞ。
新年(2月ですが)からの初挑戦、頑張っていきたいと思います!
行った、見た、感動した! 「わたしの2022年」美術館めぐり【特別お題】
特別お題「わたしの2022年・2023年にやりたいこと」
2022年秋、ひさしぶりに「ぐるっとパス」を利用して、興味ある美術展に行きまくりました。
しかし、最初に利用した日から2か月という短い期間であちこち回るのは、予想以上に大変……。おかげで「せっかく出かけたのに、ブログが書けない」不完全燃焼な状態に。
今回2022年の総括ができるお題があると知り、自分の日記も兼ねて投稿することにしました。
最後まで読んでいただければ嬉しいです!
※今期の販売は1/31までです! 最終有効期間は3月末と短いので、興味のある方は次年度で買ったほうがいいかと……。
『フィン・ユールとデンマークの椅子』展 東京都美術館
デンマークのデザイナーであるフィン・ユールの美しい椅子の企画展。
彼を生み出したデンマーク家具デザインの歴史も作品とともに紹介されており、知識がない私でもデザイナーごとの作風を楽しめました。
都美術館のギャラリーは毎回ちょっと変わった企画をしますね。以前記事に書いた『BENTO おべんとう展』もおもしろかったです。大行列の特別展より、記憶に残ることも多いかもしれません。
広々とした展示室に椅子がずらりと並びます。これだけ勢ぞろいすると壮観。
「ラケットチェア」命名通り、椅子の背にラケットのガットのようなものが張ってあります。座りにくくないのだろうか……。
下の写真はフィン・ユール作のソファ。
どんなに美しいデザインでも、家具はあくまでも実用品。フィン・ユール展では実際にデンマークの椅子に座って、そのデザインを体感する試みも行われました。しかも、太っ腹にひと部屋まるまるがお試しスペース!
これが楽しかったですね~!*1(座りながら「このソファ、買ったらおいくらだろう……」との気持ちがよぎりましたが)
やはり眺めるだけと使ってみるのでは、感想がまったく違います。座り心地がいい椅子はリピートする来場者も多く、空くのを辛抱強く待ったりしました。
ちょうど藝祭も開催中! しかしチケットは取れず……
しかしコロナ前とは違い、時間ごとの定員制&チケットは即売り切れ……。
敷地内にも入れなかったので展示はもちろん、迫力満点の手づくり御輿*2も見られませんでした。毎回楽しみにしてるんですが、こればかりは仕方ない。
そのかわり、学生さんたちが出店するアートマーケットはのぞいてきました!
法被姿の藝大生もちらほらと。御輿と同じくらい、学科ごとに違うデザインの法被を見るのも楽しみのひとつ。行きそびれたお祭りの空気を感じて嬉しかったです。
【2022藝祭御輿公開‼️】
— 藝祭2022 (@geisai_koushiki) September 2, 2022
2022藝祭の神輿をついに公開!!!
御輿パレードは11:00開始予定👊#藝祭2022#藝祭でふれる pic.twitter.com/guMxJFdTea
[御輿・法被パフォーマンス]
— 藝祭2022 (@geisai_koushiki) September 2, 2022
御輿・法被パフォーマンスの様子を覗き見👀
どの隊も「ふれる」から連想した御輿法被を存分に表現してくださいました👏
これより藝大へ戻ってきます🫧#藝祭2022#藝祭でふれる pic.twitter.com/XYDRf0GLMb
他の手づくり市と比較すると、自分の絵をプリントしたTシャツやトートバッグ、手染め製品などが多い印象です。定番のポーチといった布もの?は見かけず。
『キース・ヴァン・ドンゲン展』 パナソニック汐留美術館
キース・ヴァン・ドンゲン。フォーヴィスムや、海外美術館の所蔵作品としてよく出会う作家。
彼について、名前は知っていても「色彩も線もくっきりと鮮やかな、女性像が多い画家」くらいのイメージしかありませんでした。
その通りではあるけれど、ひとりの作家を年代順にみると捉え方は変わりますね。
女性の肌の表現が多彩で、とても印象に残りました。
輪郭を赤で強調すると血色のよさが際立つ。
逆に黄色みを多くすると、人工的な光源にさらされてる感じ→都市部のブルジョワをたくさん描いた画家なので、意識的かも?
……などなど、女性像へのこだわりに注目しつつ鑑賞。
花瓶に生けた花をはじめとした静物も好きです。
『メメント・モリと写真』展 東京都写真美術館
マリオ・ジャコメッリ『やがて死がやってきてあなたをねらう』
恵比寿ガーデンプレイスの夜景。
ラテン語で『死を想え』を意味するメメント・モリを題名とした収蔵作品展。
スマホで気軽に撮影できる世の中だというのに、私は芸術としての写真は見方がいまひとつわかりません。
作品の好き・嫌いすら、はっきりと感じることは稀。考えてみると不思議な話です。
しかし、今回はどうしても行きたかったのです。
なぜなら、マリオ・ジャコメッリの写真が見られるから!
マリオ・ジャコメッリ 【白、それは虚無。黒、それは傷痕】
この写真家の名前を覚えたのは2013年。場所も同じ、東京都写真美術館でのジャコメッリ展でした。
降りしきる雪のなか、輪になって踊る若き聖職者。彼らの呼気が冷たく澄んだ空気に溶けていく。黒と白の強烈なコントラスト、それでいて静けさを感じるメインビジュアル。
『神学生たち(私にはこの顔を撫でてくれる手がない)』『死がやって来ておまえの目を奪うだろう』*3『ルルド』──独特の詩的なタイトルにも惹かれました。
しかし当時の私は「写真なんて全然わからないし……」と、常設展だけ鑑賞して帰ってしまったのです。現地に!! いながら!!!!!
やはり写真の知識はゼロにもかかわらず、一緒にいた母が興味をもって見にいきました。合流後、とっても良かったと大絶賛。後ろ髪をひかれつつ帰宅しました。
時間とチケット代をケチったために大事なものを見逃した後悔は、写真集や特集記事に触れるたびに大きくなり、次の機会をうかがって約10年。
今回、長いあいだ焦がれた作品に(数点とはいえ)対面できて、ちょっと胸がいっぱいになりました。また大回顧展やってほしいなあ。
※冒頭にリンクを張った記事は2013年の展示についてですが、たいへん素敵だったので興味のある方はぜひ! 写真もたくさん掲載されています。
ウジェーヌ・アジェ、ダイアン・アーバス、東松照明(とうまつしょうめい)など
ジャコメッリの他に気になった作家の覚え書きです。
☆藤原新也
新聞の連載で名前は知っていたものの、作品をきちんと見るのは初めて。
インドで撮影した野犬に喰われる遺体の写真はギョッとしました*4
自分の好みとは少し違う。しかし、印象的なタイトルや添えられた文章から一時代を築いたのは想像できました。
☆東松照明(とうまつしょうめい)
長崎で原爆の残した爪痕を撮影した作品群に魅入られました。
一目見たら忘れられない作品『熱線と火災で溶解変形した瓶』よじれて歪にのびきった瓶は、まるで人間の内臓のよう……。鑑賞するのに覚悟のいる作風です。
☆ウジェーヌ・アジェ
こちらは竹橋の近代美術館でもよく展示されているアーティストです。
私のなかのアジェのイメージは、人影のない、白昼夢のようなパリの街並みを淡々と撮り続けた作家。
神秘的なその作風は、彼のキャリアが「画家向けの資料として写真を撮る(そのため早朝の人っ子ひとりいない街を撮影した)」ところからスタートしたためです。
でも、今回のパリの街には人が写っていましたね。これはこれで好き。
写真に疎い私でも、有名な一卵性双生児の少女の写真は知っていました。
映画『シャイニング』の双子はこの作品へのオマージュだとか。
身体的・精神的に「普通」とは著しく異なる【異形の人々】をモデルにした作品で知られたそうですが、今回の展示は印象が違いました。
寝室で着飾った未亡人の顔は感情がすっかり抜け落ちたよう。
華やかな表面からはわからない、一瞬の虚無を切り取ったような作品が多かったです。
『アーツ・アンド・クラフツとデザイン展』 府中市美術館
府中美術館には以前『ウィリアム・モリス展』で来たことがあります。
本展と共通する作品も多く、この手の企画を頻繁にやるんだな~と開催年を見てみると、なんと2013年! あれっ……そんな昔……?
タイトルの「アーツ・アンド・クラフツ」とは、19世紀イギリスで始まったデザインの革新運動。
工場での大量生産による粗悪品が氾濫する世の中に対し、伝統的な手仕事を見直し、美しく使いやすいデザインの品で暮らしを彩ろうと提案するムーブメントです。
撮影不可だったため、看板やディスプレイで伝われ雰囲気……!
☆いままでモリスのデザインを単純にキレイ、可愛い♡と思ってきたけれど、しっかり鑑賞してみたら、意外に力強く野性味があると気づきました。鳥のデザインなどで顕著です。
有名な『いちご泥棒』はインディゴ染めなのか~というのも今回の学び。褪色したのか、生い茂る蔓の印象が強いせいか、てっきり全体も緑色に染めてると思ってました。
☆モリス以外でたいへん気に入ったのが、チャールズ・F・A・ヴォイジーの作品。シンプル、かつあたたかみのあるデザインで可愛い!
『小鳥』向かい合った小鳥と釣鐘型の花が、遠目には混ざって小紋柄のように見える絵が面白かったです。タイルのデザインも素敵でしたね。
☆ジェシー・マリオン・キング
初めて知った挿絵画家。細くて繊細な線、ロマンティックな作風が印象的でした。展示がもう数点あると嬉しかったなあ。
☆世代を超えて大人気、「リバティ・プリント」のリバティ商会も数多く展示されていました。
プリントがたいへん有名ですが、今回はアクセサリーや食器なども紹介されていたのが新鮮。装飾品はエナメルで彩色が施された品が目につきました。鮮やかで華があるのに、比較的安価だったからでしょうね。
リバティ商会はブランドカラーを強めるため、作家名は基本明かさない方針とか。名も知れぬ職人たちの技に息をのみつつ、じっくり鑑賞してきました。
豆知識 商標登録はこんな時代からあったそうで……思ったより早い!
解説が非常にわかりやすく、そのためアーツ・アンド・クラフツ運動に関わる芸術家の大量生産品への敵愾心も想像することができます。
美しさにこだわれば、製品の値段は当然あがる。運動は高く評価されつつも、やはり工業化の波は避けられなかったようです。さぞもどかしい気持ちだったことでしょう。
しかし「少数のための芸術はいらない」が理念ならば、機械化が進むのは当然のこと。
機械で作られたシンプルなデザインにも美を見出すことで、モリスの理想は次世代に伝わっていきます。当初の方向とは違っても、想いは受け継がれる──幸せな運動だと思いました。
グッズが充実! お土産の一部です。
オレンジ色のしおりは、美術館の企画で作成したもの。好きなデザインのスタンプを押すだけですが、こういうちょっとしたお楽しみがあるとテンションあがりますね。
ちょうど無料観覧日だったため、子どもたちも多く訪れていました。なのに驚くほど静かで、ちょっと戸惑った私。騒ぐのは論外として、親子鑑賞会をやってる美術館もあるし、児童が多い特定の日は多少のおしゃべりは許容範囲と思っていたので……(感想を言い合うことで興味を育てる面もありますよね)
わざわざ見にくるからには、もともと美術館好きなのかもしれません。しかし黙食の影響もあるのかなあと、しばし考え込んでしまいました。
『装いの力 異性装の日本史』 渋谷区立松濤美術館
SNSで若者を中心に話題になった展覧会。Twitterなどで目にした方も多いのではないでしょうか。
少女マンガと相性がよく題材になることが多いため、私自身も楽しみにしていた企画でした。
敵を欺くため女性の装束をまとったヤマトタケルや『とりかへばや物語』、戦場で刀をふるう女武者から始まり、歌舞伎などを紹介しつつ近代~現代のゲイカルチャーや舞台、マンガにおける描写まで。
『ベルサイユのばら』の原画や、『リボンの騎士』『ストップ!!ひばりくん!』の複製原稿も展示されていました。
開催を心待ちにしていたとは言いましたが、実はちょっと気が重くもありました。以下は展示とは直接関係のない、個人的な感想です。
男性か女性か—人間を2つの性別によって区分する考え方は、私たちの中に深く根付いています。しかしながら、人々はこの性の境界を、身にまとう衣服によって越える試みをしばしば行って きました。社会的・文化的な性別を区分するための記号である衣服をもって、生物学的に与えられた性とは異なる性となるのです。(中略)
男らしさ、女らしさとは何なのか。日本における異性装の系譜の一端を辿ることで、それらがどのように表現されてきたのかということを探り、「異性装」という営みの「これまで」と「これから」について考えます。
「装いの力──異性装の日本史」公式サイトより引用
美術展のコンセプトを読んで私がまっさきに思い描いたのは、子どもたちが好きな色を選べるようになったランドセル、もしくはスカートの裾をひるがえす男性像。
男の子(女の子)だからダメ、女性(男性)ならこうするのが当たり前。そういった枷から誰もが解き放たれ、好きなものや好きな人を堂々と愛せる世界へと向かうこの時代にピッタリな展覧会だと思ったのです。
しかし現状を調べていくごとに、そんな考えはのんきすぎたのかもしれない……と暗い気持ちに。
私が想像していたよりもずっと「男性」らしさ、「女性」らしさの枠組みは強固でした。さらに、その高い壁を乗り越えようとする運動にも過激な流れがあると知り、ひたすら困惑……。
価値観がガラリと変わる過渡期に人々の対立はつきもの。とはいえ、現代はSNSなどで諍いが目に見えるのでしんどいですね。
テーマを深掘りして勝手にダメージを受けたりしましたが、展覧会自体は(身構えたような)先進性・多様性を過剰に押しだすものではなく、楽しい内容でした。
唯一写真OKだった撮影スポットでは、こんな遊び心も!
華やかに着飾ったドラァグ・クイーンのみなさん。フラッシュで撮影すると……? ↓↓↓
松涛美術館は小さい建物ながらいつもセンスのいい企画をしてくれます。今回も難しい題材だったことでしょう。これからも足を運びたいアートスポットです。
『南桂子展 透き通る森』 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション
南桂子は詩情あふれる作風で知られた銅版画家。哲学的な風貌の少女や素朴でかわいい鳥のモチーフは、多くの人から愛されています。
夫である版画家・浜口陽三の作品を展示するミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションでは、定期的に彼女の作品展を開催しています。今回、小説家の小川洋子セレクションの南桂子作品が展示されると聞き、そちらも楽しみに向かいました。
美術館は人形町駅から徒歩10分ほど。地下鉄から地上に出たとたん、ものすごくいいほうじ茶の香り! お茶屋さんをはじめ、甘酒横丁はおいしそうな食べもの屋が多いので、散策する時間もとれると楽しいですね(私は最終日、かつ時間ギリギリだったため店を横目に走りました……)
手前のスペースは併設のカフェ。ヤマサの黒蜜風醤油を使用した自家製バニラアイスが季節のアイスと共にいただけるそうです。
小川洋子さんが南桂子作品を好んでいるの、すごく納得しました。モチーフは静かで愛らしいのに、どこか底知れない感じが小説のイメージにぴったり(何作も読んだわけではないけれど)
繊細なタッチはこぎん刺しといった刺繍を連想します。そこも気に入ったポイントかもしれません。
浜口陽三の版画も何点か展示されていました。
かつて吉祥寺美術館(浜口陽三記念室)で鑑賞したサクランボの絵は衝撃的でした。暗がりから滲み出てくるような色彩に、版画でこんな表現ができるのか!と驚いた記憶……。
暗い色調の作品が、光の反射ですこし見づらかったのだけが残念です。
下の写真は「表紙部分をくり抜いた本に、南桂子のポストカードを入れて自分だけのデザイン本を作ろう!」というお楽しみ企画。
私はお屋敷から遠ざかる鳥の絵を選びました。
題名も自由に書き込めたのですが、恥ずかしいのでスタンプぺたり
こちらの「青い日記帳」さんの記事は2021年の南桂子展について。コロナ禍で疲弊するなか、南桂子作品を鑑賞する意味を丁寧にレポートされています。
『秋のバラフェスティバル』 旧古河庭園
春に続いて、行ってきました旧古河庭園!
「秋バラは春バラと比較するとやや小ぶりの花がつく」との話でしたが、ちょうど見頃だったためか、十分に美しく目を楽しませてくれました。
今回のお目当てはバラの他にもうひとつ……
それは洋館前の広場で開催されるクラシックコンサート!
29日土曜日は「秋バラの音楽会 #弦楽四重奏」!12時からと15時から、各回約30分です。(雨の場合は中止です)秋バラも見頃で当日を迎えられそうです。バラとともに優雅な音楽もお楽しみください♪#旧古河庭園 #バラ #ツイッターで楽しむ庭園 pic.twitter.com/5kwIB1jasY
— 旧古河庭園 (@kyufurukawa) October 26, 2022
ひつじ雲というのでしょうか。青空との対比が信じられないほど鮮やかで、そんななかで演奏される弦楽四重奏。思いがけずファンタジックな体験をしてしまいました。
選曲はディズニー2曲、カノン、ベッド・ミドラーの『The Rose』(いちばん良かった)、あとは『鎌倉殿の13人』、葉加瀬太郎作品など。
演奏会は定期的に行われているようです。予定さえ合えば、是非また参加したいですね。
長~い記事、読んでいただきありがとうございました!
大寒波が各地を襲うここ数日。
けれど、春はもうすぐそこです。あたたかくなったらどこへ行こう? 2023年も(ペースはぐっと落としつつ)素敵な美術展と出会えたらいいなと思います。
こちらの記事もぐるっとパス利用で訪れた美術展↓↓↓
その「正義」は永遠か? 『いけないのファッション展』不確かな現代に問いかける
『いけないのファッション展』アクセサリーミュージアム 12/17(土)まで
毒で光るガラス、人型のアクセサリー、生き物たちの毛皮。みんなみんな文化的でオシャレだった。 ──『いけないのファッション展』広告より引用──
祐天寺のアクセサリーミュージアムで12月17日まで開催されている『いけないのファッション展』に行ってきました*1。
こちらの美術館には以前から行ってみたかったのですが、機会がなく数年が過ぎ……今回ぐるっとパスの対象施設であること、そして企画展が興味深い内容だったことからやっと訪問が叶いました。
たいへん楽しかった!!!
長いファッションの歴史の中で、当時は好ましく思われていなかった素材やテーマのもの。
反対に、時間が経つことで好ましくないとわかったり、現代の価値観では賛否両論のもの。
それらを一堂に集めて、みんなで考えてみようという攻めた展覧会です。
嬉しいことに写真撮影も可能。
会期終了まであとわずかですが、展覧会の魅力を伝えたいので記事にしてみました。
それでは行きます!
住宅街のど真ん中! アクセサリーミュージアムまでの道
すこし道順がややこしいのですが、あちこちの電柱に案内が掲載されているので迷うことはないと思います*2。
オーナーさんの自宅を改装した落ち着いた佇まい*3。
アクセサリーミュージアムは「コスチュームジュエリー」を中心に展示する美術館です。
コスチュームジュエリーとは、貴金属や宝石など高価な材料を使った装身具(ジュエリー)とは異なり、流行を重視して素材を問わず作られた装身具のこと。
高いファッション性を誇ると同時に、後世には残りづらいという悩みも。そのような性質上、まとめて鑑賞できるこちらの美術館の存在は大きいと思います。
1階 時代を彩る装身具 ヴィクトリアンからアール・デコまで
スロープを上がり1階で受付。
1階部分はほとんどが常設展で、年代ごとにアクセサリーが並んでいます。
セルロイドのブローチ。加工が容易なため繊細な品が次々と生み出されましたが、寒さで硬化する・燃えやすいなどのデメリットで衰退しました。
こうやってマネキンが実際に身につけるとさらに素敵!
最初「すごく高価な、いわゆるジュエリーとは印象が違うな~」と見ていたんですが、こうしてファッショナブルなドレスと合わせるのはコスチュームジュエリーのほうが良いかも? と思うように。
流行の最先端をおさえられるのはもちろん、軽やかで仰々しくないんですよね。ごく一部の富裕層しかできなかったオシャレが大衆にも広がる時代にはぴったりだったのかもしれません。
木が化石化して生まれる漆黒の宝石「ジェット」。英ヴィクトリア女王が愛したことで有名で、礼装用ジュエリーとして用いられます。
2階 企画展『いけないのファッション展』
2階部分がまるまる企画展のスペースです。
鉛や水銀入りの白粉、それらの中毒でボロボロになった肌・歯を隠すための華麗な扇などなど……。日本でも時代小説を読んでいると該当するシーンがあったりしますね。
すごくすごく可愛いし欲しいんですが、現在では使用禁止の染料で染められたハンカチ。そのように聞くと、鮮やかな色合いがいっきに毒々しく思えてきます。安全な素材で復刻しないかなあ。
チェコの「サフィレットグラス」制作方法が公になっておらず、妖しい色はヒ素などの猛毒を使用しているのでは?ともっぱらの噂だったとか。そんなんガラス越しでも怖いじゃないですか……。
薬物取り締まりが緩かった時代、ドラッグの計量に使われたスプーン状のネックレス。実際に使用するよりも、ファッション的な意味合いが大きかったかもしれないとのこと。
そして、こちらが企画展のハイライト!
リアルファーをまとったマネキンが、ぐるりと一室を占拠する場面です。
圧巻でした。
学芸員さんと話す機会があり(後述します)、そのときにお聞きした話です。
毛皮のマネキン群の展示室と、他の部屋の室温設定はおなじなのに、なぜか寒さを感じるとの声が多数あったそうです。
よくわかる気がします。私が鑑賞したときも他の客がおらず、しんとした室内に入るのをしばらく躊躇いました。厳粛さと不気味さのちょうど中間。
私や学芸員さんの親世代にとって、毛皮は大事に扱い、身内に伝えていく一生ものの品だったはずです。
けれど現在では賛否の否が圧倒的に大きく、代替品であるフェイクファーにも分解しにくいなど問題が山積み。
このような未来を若い母は想像できたでしょうか。
地下 華やかな時代の薫り オートクチュール~アバンギャルドまで
地下の3分の1は『いけないのファッション展』です。そのほかは常設展。
人種差別的であると問題になり、販売中止になったサンダル。
ルリカワセミの小さな青い羽をカットし、ニカワではりつける点翠(てんすい)という技法。
ペーパードレス。丈夫な紙や不織布で作られており、自分でカットして丈を調節できるうえ安価と、大量消費社会に大歓迎されたそうです。
流行が長く続かなかった理由は耐久性への不安や風で大きく広がるところ、さらには「パーティーで男性にわざと水をかけられる」被害が多かったからと知り、正直うえぇぇ……となりました。よくそんな卑劣なことを思いつくなぁ。
ここから下の3点は常設展です。
(いまさらですが……そして閉幕も近くなってブログ記事あげといてなんですが……)この美術館めっっちゃくちゃに展示数が多いので、こまかく鑑賞したい場合お時間に余裕をもって訪問してくださいね!!
ミュージアムショップが楽しい! アトリエではアクセサリー教室の開催も
【企画展】
— アクセサリーミュージアム @ 東京都目黒区 (@acce_museum) August 30, 2022
「いけないのファッション展」
2022年9月1日~12月17日#美術館 #アート #コスチュームジュエリー #アクセサリー #ファッション #展覧会 pic.twitter.com/PqQZrnwP8o
会期も残り少なくなってきた #いけないのファッション展 では、オシャレ割引として通常チケットの入館料を100円割引いたします。
— アクセサリーミュージアム @ 東京都目黒区 (@acce_museum) December 2, 2022
過度の露出や危険物などは割引対象となりません。楽しくご参加いただくためホームページの注意事項をご確認ください。https://t.co/BKsq2iTOFR pic.twitter.com/PTCqPZO6O2
美術館の地下にはアトリエとミュージアムショップがあり、アクセサリー教室も定期的に開催されているそうです。館長さんがアクセサリーメーカー大手で長年活躍された方のため、海外輸出用に制作しためずらしいパーツも豊富とか。
手づくりがお好きなら展覧会帰りに掘り出し物をさがすのもいいですね!
最後に 学芸員さんとお話したこと
スタッフはみな気さくな方ばかりで、鑑賞後に展覧会の感想を少しお話できました*4。
なにが「正しい」か、そうでないかを明言せずに、鑑賞者に考えさせる姿勢が(押しつけがましくなくて)良かったと伝えるとたいへん喜んでいただけました。
テーマがテーマなので、美術館側も迷いつつ手探りでやっている状態だそうです。SNSで紹介されお客さんが増えたのが嬉しい反面、扱いの難しさを日々痛感しているとか。
若者の無軌道な行い=パワーでもあるため、すべてを咎めるのはどうだろうか。
キャンセルカルチャーとの関連性……など、自らの不勉強を実感しつつ色々話せて楽しかったです。
『いけないのファッション展』は12/17まで! 興味があれば行ってみてください~!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
迷ったけれど買って正解! 通販生活ヒートコットンケット&ぐるっとパス【今週のお題】
今週のお題「買ってよかった2022」
ひさびさのブログ投稿です! リハビリ感覚でぼちぼちキーを打つ日々……
今年も残すところあと3週間、年内にブログ復帰したいな~と考えていたらちょうどいいお題が! 便乗させていただきます。
偶然にも「購入を迷った品だけど、買って大正解」なもの2点となりました。
買い物その① これで冬は無敵!「ヒートコットンケット」(通販生活)
よく広告で見かける雑誌『通販生活』、作家や俳優などの著名人が愛用品を熱っぽく語るので気になっていました。
ほかの通販雑誌とは違い、出版社の思想が反映された記事が多い点も個性的です*1。お試しでカタログを取り寄せたこともありましたが、注文は今回が初めて。
購入したのは発熱蓄熱綿を使用した「ヒートコットンケット」
https://www.cataloghouse.co.jp/bedding/futon/1103520.html
関東の街中在住の私ですが、火の気のない冬の室内はやっぱり寒い!
過去記事にも書いた通り「手掌多汗症」を抱えている身ゆえ、防寒対策にも工夫がいるのです。
湯たんぽは布団にはいる瞬間は極楽なんですけどね……。
そのうち熱くなる→足の裏に汗をかく→湯たんぽをとりのぞく→汗が冷えて寒くなる、冬はこの無限ループが続きます。安眠ははるかに遠い。
しかし、この毛布は寝ているあいだに湿気(汗)を吸っては熱に変えてくれるとか。
汗なら売るほどある!!!! ぜひとも使って!
藁にもすがる気持ちで買ってみました。
正直「発熱素材なんてインナーでもよく聞くし買うけど、汗をかいてもヒンヤリしない程度でしょ」と疑いつつ……だったのですが、使用して約1ヶ月、なかなか良いです!
寒がりの汗っかきによるヒートコットンケットの評価ポイントは、以下のみっつ。
700gと軽く、肩がこらない
汗問題にくらべれば些細なものですが、分厚い毛布はやはりストレスでした。
届いた当初はあまりの薄さに不安をおぼえたものの、すっかり慣れて快適に使用しています。荷物にならないので宿泊先のエアコン対策に持っていくという意見も見かけました。
このまま真冬も乗り越えられるなら、純毛の重たい毛布は処分するかもしれません。
寝返りうってもズレない頼もしさ
冬に肩がこる原因は、毛布の重さのほかに冷えもあるかと思います。
とくに私は寝相が悪いので、肩が布団から飛び出ることもしばしば。ブランケットや羽毛入り肩当てを使うと、寒くないかわりに身動きが不自由でした。
この商品はシャーリングが首元・肩口に密着するため冷気が入ってきません。
布団から腕だけを出してスマホや本を見るなんて動作をしても、余裕でフィット。
寝るまえのひと時の自由度がグッと上がりました。
汗かきの強い味方! 湿気を熱に変える「発熱コットン」
これが購入の決め手でしたね。
布団にもぐりこんでしばらくは全身が冷えているので当然寒いです。
しかし足先をこすりあわせたり、指の運動をしたりしていると、じんわり汗ばむのと同時に寒さがマシになってきます。普通は汗をかけばかくほど寝具に体熱をもっていかれ、耐えているしかないのですが。
冬場は就寝時すらモコモコ靴下が欠かせなかった私。最近あえて爪先の出たレッグウォーマーのみで寝ています。そのほうが汗を変換して早くあったかくなるのでは?と考え……。
湯たんぽの感動的なあたたかさには到底及びませんが、汗冷えの危険を避け、1度ホカホカになったら長持ちするというのが高得点!
汗で悩むお仲間にぜひ試してみてほしいと思います。
オマケ 通販生活以外では買えないの?
ヒートコットンケットは通販生活専売とのことですが、類似品がamazonなど通販サイトでも売っているのを不思議に思い、軽く調べてみました。
メーカーはロマンス小杉製とあり通販生活と同じ。重量が他社販売は1Kgと重く、繊維の割合が違ったりカラー展開が豊富だったりが目立った相違点でしょうか。
通販生活サイドは商品レビューへ「上下の端と中央のシャーリングの幅を変えて、より体に密着するようデザインした小社オリジナルの商品です」と返信しており、細部にこだわっていることがうかがえます。
比較して感想は書けませんが、値段もほぼ変わらないのでとりあえずヨシ!と考えています。
買い物その② 美術館めぐり最高!「ぐるっとパス」
ここ数ヶ月ブログを書けずにいた原因のひとつがこれ、「ぐるっとパス2022」です。
最初に利用した日から2か月間、東京とその周辺の美術館・博物館・動物園や公園などの施設に行きまくれる夢のようなパスポート!
※無料で入場できる展示と通常料金から割引になる展示にわかれます
常設展だけでなく「こんな話題の展覧会が!??」と驚くような企画に入場できたりするので、ここ数年ずーっと買いたかったのです。
しかし、2か月間でチケットを堪能するのはかなり難しい……。
自由に動ける日を確保することはもちろん、行きたい美術展の開催日が離れているなどタイミングの問題もあります。「あと1週間ズレていればこっちも行けたのにな~」と悔しいですが、なかなか上手くいかないですね。参加できたのは2014年のみ(8年前!)
そんなわけで見送ってきたぐるっとパス、今年はひさしぶりに使い倒してきました。
たいへん楽しかったです! こちらは改めて記事にしたいと思います。
ネタにするつもりが、忙しくてブログを書けないのは不本意でした。本末転倒……
ちなみに過去記事で書いたこれらの施設も対象です↓↓↓
気軽にブログ復帰記事のはずが長くなってしまいました。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
*1:ここらへん好き嫌いが極端にわかれそうですね
女たちの紡ぐ物語 「塩袋と伝統のギャッベ展」と小説『からくりからくさ』
絨毯、キリム、草木染め。
古くから女の手仕事とされてきた染織工芸は、女性の感情と深く結びついている。
外出機会が多かった5月。たばこと塩の博物館で開催された「塩袋と伝統のギャッベ展」にも足を運んでいました。いつの話?という感じですが……
素晴らしい展示だったので、自分が忘れないためにも文章にしたいと思います。
記事後半は、展覧会と関連した小説のご紹介。
ギャッベ展を鑑賞しながら強い既視感に襲われました。
『からくりからくさ』(梨木香歩)
読んだことのある方なら「ああ……」と納得していただけるかもしれません。
よろしければ最後までおつきあいください!
「塩袋と伝統のギャッベ展」 たばこと塩の博物館
「丸山コレクション 西アジア遊牧民の染織 塩袋と伝統のギャッベ展」🐑5/16(日)まで開催中!
— たばこと塩の博物館公式 (@tabashio_museum) 2022年4月1日
映像でご覧いただいても、美しさや迫力は伝わってくるかと思いますが、実物からはさらに絶妙な色合い、それぞれの質感、使い込まれた味わいまで伝わってきてまた素晴らしいものです✨#ギャッベ #染織 pic.twitter.com/GhTgW2Eu29
「塩袋と伝統のギャッベ展」5/15(日)まで開催中🐑
— たばこと塩の博物館公式 (@tabashio_museum) 2022年4月12日
今回はイラン遊牧民が羊毛染色に使った原材料について。
赤はインド茜の根、黒は鉄鉱石、茶はくるみの実の皮、黄はサフラン、橙や桃色はザクロの皮などが原材料です。
遊牧民は、移動生活の中で得られる植物や鉱物から染料を調整したのです。 pic.twitter.com/q9DqLM298k
展覧会タイトルの「塩袋」「ギャッベ」、耳慣れない単語に一体なんだろう?と首を傾げた方も多いのではないでしょうか。
塩袋*1は名前通り塩を保存するための袋で、遊牧民の生活には欠かせない道具。
美しい模様を織り込んだ塩袋は実用品であると同時に、世界にコレクターがいる民族工芸品でもあります。部族ごとにデザインに特徴があり、所有者がわかるようになっています。
こちらのサイトで丁寧な説明とともに塩袋のコレクションを見ることができます。ぜひリンクから飛んでみてください。色合いもさまざま、華やかな房飾りがついていたりと多種多様!
それにしても、筒状にすぼまった凸型……ちょっと変わった形状ですよね。
奇妙なつくりの謎は、遊牧民と家畜との関係を考えると答えが出ます。
なぜ口がすぼまっているのか── 答えは「家畜が塩を勝手に舐められないように」!
遊牧民にとって家畜は財産ですが、いくら大事でも紐につないでおくわけにはいきません。
広大な大地で家畜をコントロールする手段。それが「塩」なのです。
草食動物が餌とする植物には塩分がほとんど含まれず、そのため家畜は本能で塩を求めます*2。
人間が塩を与えてくれると理解すれば、囲ったり拘束しなくとも彼らは従ってくれる。
展覧会ではこの仕組みを「生理的な紐」と表現していました。
塩袋の奇妙な形状は、家畜の頭が入らないサイズに作られているそうです。
草食動物に塩が必要なことも「そう言われればそうか」程度の認識だった私には、すべてが未知の世界。身近にいる動物といえば犬・猫なので、ついつい塩分はとらせちゃダメ!と思い込んでいました。
しかし、精緻な芸術品として高額でやりとりされる絨毯とは違い、基本的に売買はせず家庭内で使われるものです。
それゆえに織りが粗かったり、素朴なデザインだったりと、絨毯の原型と呼ばれるギャッベならではの魅力が楽しめます。
商品として考えていないためか、モチーフも自由奔放で驚かされました!
植物や孔雀・ライオンといった動物、少女たちの群舞のような可愛らしいデザインも。伝統的な絨毯よりギャッベのほうが現代のインテリアには映えるかもしれませんね。
技術がまだ拙い少女の練習台でもあったらしく、素人目にもガタガタしてるかな?とわかる品があり微笑ましかったです。2人で同時に左右から織ったものとなると、技量を比較されてしまい少々気の毒でしたが……。
キリムも展示されていました。
遊牧民絨毯・ギャッベはどちらも毛足が長い織物ですが、キリムは平織り。他の2種よりも軽く薄いため、生活のさまざまな場面で使われるそうです。
展覧会 感想まとめ
ギャッベも塩袋も、生活に密着したものだからでしょう。
きれい!目の保養!と単純に楽しむのと同じくらい、これを作った女性たちの生活に思いを馳せてしまいました。
遊牧中に簡易な織り機で織ったギャッベは、最後に真ん中でつなげて完成させるのですね。住まいを移動しながら染織作業をするというのも、やっぱり想像がつきません。
絨毯ひとつを完成させるのにかかる、気の遠くなるような時間。いったい何を考えて、どんなことを話しながら織り上げるのか。
そんなことを考えつつ、長く展示室で過ごしてきました。
本展覧会は終了してしまいましたが、塩袋は過去にも何度か企画展に出品されているそうです。
面白いテーマの展示が多いので、スカイツリー・押上散策の際にはぜひ寄ってみてください!
『からくりからくさ』 梨木香歩
『からくりからくさ』は手仕事に魅せられ、古い日本家屋で共同生活を送る女性たちの物語です。
糸を紡ぎ、植物の枝葉をとってきて草木染めをし*3、朝な夕な機を織る。
展覧会でこの小説を思い出したのは、登場人物のひとりがキリムを研究していたためでした。
蓉子・紀久・与希子・マーガレット。
若い女性が4人集まればさぞ華やかな……と想像しますが、蓉子の祖母の遺した家に集まった彼女たちの日常はぐっと地味なものです。
ていねいな暮らし系の小説と思いきや、食費を節約して網戸を導入しよう!と庭の雑草を料理しはじめる展開も。その様子はまるで大人のおままごとで、ジャンル分けのできない複雑な魅力をもつ作品でした。
『からくりからくさ』を異色作にしているのが、家の中心に座る「りかさん」の存在です。
蓉子が祖母からもらった日本人形で、幼いころから折に触れて彼女を助けてきた不思議な人形。りかさんに導かれるように、4人は自分たちに繋がる人々の過去をたどっていきます。
最後に、少し長いですが本文を引用して終わりたいと思います。
紀久が旅先から皆へ送った手紙の一節。私が「塩袋とギャッベ展」でめぐらせた見知らぬ女性たちへの想像が、くっきりとした文章で綴られています。
(前略)
一日の家事や野良仕事が終わった後、機に向かったのですから、心躍る楽しいことのあった日、切ない、悲しいことのあった日、怒りのこみ上げて止まない日、機の音は違っていたでしょうし、反物はそういうものに織りあがっていったのです。
女たちは機を織る。
反物という一つの作品に並行して、彼女たちは自分の思いのたけも織り上げていったのです。
古今東西、機の織り手がほとんど女だというのには、それが適正であった以前に、女にはそういう営みが必要だったからなのではないでしょうか。誰にも言えない、口に出していったら、世界を破滅させてしまうような、マグマのような思いを、とんとんからり、となだめなだめ、静かな日常に紡いでいくような、そういう営みが。
『からくりからくさ』梨木香歩 本文より引用
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
『からくりからくさ』機会があればぜひ読んでみてくださいね。
美術展関係はこんな記事も書いています ↓↓↓
こんな「カワイイ」見たことない!『上野リチ展』のすすめ(~5/15まで)
『上野リチ ウィーンからきたデザイン・ファンタジー』展
4月の半ば、三菱一号館美術館で開催されている『上野リチ』展へ行ってきました。
JR東京駅から徒歩5分と好立地の三菱一号館は、日本であまり知られていないアーティストの紹介が上手なイメージがあります。*1リチ展も例外ではなく、毎日大盛況が続いているようです。
上野リチの名前すら知らなかった私。広告で見かける作品の豊かな色彩・自由自在な魅力に、これはぜひ鑑賞しなければ!と足を運びました。
上野リチ 本名フェリーツェ・リックス
19世紀末ウィーン生まれ。「ウィーン工房」にデザイナーとして在籍。
身近な自然や動物をモチーフとした作品を次々と発表する。
のちに日本人の建築家・上野伊三郎と結婚。
夫の生まれ故郷である京都とウィーンの往復生活を送り、ウィーン工房を退職後は拠点を京都に移し、美術大学の講師なども務めた。
展覧会で印象に残っているのは、なんといっても見ている人々の間に流れる幸福な空気です。
お客さんから「かわいいねぇ」としみじみした呟きを何度聞いたことか。
種類豊富なグッズの販売や「ウィーン生まれのカワイイです」(リチ展キャッチコピー)を考えると、訴えかけたい層にしっかり届いた結果が現在の人気でしょう。
会期は残すところあと半月、もっとたくさんの方々に見てほしいと思います。(5/15まで)
リチ展のこまかな感想あれこれ
・日本の「染型紙」が西洋のテキスタイルデザインなどに影響を与えたのは有名な話です。リチ展でも型紙と、それにインスパイアされた作品の両方を展示していました。こういった紹介の仕方はわかりやすくていいですね。
ひとつの文化が海を渡り、また別の魅力をもった芸術へと変わっていく様は感動的でした。
三菱一号館では10年ほど前『KATAGAMI展』という企画もやっていたので、得意なジャンルなのかもしれません。
・上野リチが活躍していたウィーン工房のアーティストの作品も多数展示。
優美な曲線を使用したデザインで流行をつくったダゴベルト・ペヒェ、リチの実妹であるキティ・リックスの陶芸作品も大らかな明るさが素敵でした。
・テキスタイルデザインの他、七宝細工の箱やマッチ箱カバーも小さな宝石のようで見入ってしまいました。煙草は大の苦手だけれど、あんなの見たら欲しくなってしまう……!
・京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)で教鞭をとっていたリチ。
他者や過去からの「模倣」を否定し、拙くとも自分の表現をするようにと学生たちに教えていたそうです。よその影響が見てとれる作品には、かなり厳しい態度だったとか。
若いうちは難しいんじゃないかな~、勉強していくうちにオリジナリティが出てくるのでは……と考えこんでしまいましたが、発展途上の若者だからこそ自戒が必要ということなのかも。
・戦時下の日本で、外国人でありながらデザインの仕事をしていた事実にも驚き。しかも、こんな夢いっぱいの作風!
【オトクな鑑賞方法 マジックアワー・チケット】
三菱一号館美術館は、毎月第2水曜日に「マジックアワーチケット」が利用できます!17:00以降に限り適用 : 1,200円(一般1,900円)
①利用する場合は必ず事前に「Webket」でチケットを購入する必要あり(実施月の1日10:00から販売開始)
②上野リチ展については支払い方法はクレジットカードのみ
③入場は17:00以降、30分間隔で割り当て(早い時間帯に入場できるチケットは早々に売り切れる)
……などなど制約はありますが、かなりお得な料金で入場できるチャンスです。
浮いたお金でグッズが多く買える! 平日休みの方やお仕事帰りに寄れる方は検討してみてください。
チケット&アクセス|上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー|三菱一号館美術館(東京・丸の内)
おまけ 『私の家では何も起こらない』(恩田陸)上野リチ装丁に関して
私は今回の展覧会で初めて上野リチに出会いましたが、その優れたデザインはすでに世間に浸透していたようです。
恩田陸さんの小説『私の家では何も起こらない』のカバーに「壁紙:そらまめ」が使われていました。
※以下はブックデザイナー名久井直子さんのインタビュー記事
「私の家」=丘の上の幽霊屋敷。
そこで繰り広げられる時代も語り手も違う物語が頭のなかで渦を巻くような、不思議な作品でした。
それぞれのエピソードが繋がる読み心地が、蔓の描かれた装丁とよく似合っています。興味のある方はどうぞ鑑賞後に読んでみてください。
リチのデザインは色違いでいくつものパターンが存在しますが、この「そらまめ」も配色でずいぶんと印象が違います。
美術館公式Twitterアカウントでは見比べられるよう複数掲載してくれていますよ。(そして、確かに私もこれはえんどう豆じゃないかと思う)
【上野リチ展】
— 三菱一号館美術館 (@ichigokan_PR) 2021年10月28日
「印象派・光の系譜」展はおかげ様で大盛況です!
その次の「上野リチ展」もお忘れなく!
秋晴れで過ごしやすい一日でした。こんな日は外に出て思い切り空気を吸い込みたくなりますね。季節は少々違いますが爽やかな気分になる作品を。ウィーン工房時代の空豆をデザインした作品です。 pic.twitter.com/5yTL3nluLv
【上野リチ展】
— 三菱一号館美術館 (@ichigokan_PR) 2021年11月1日
「そらまめ」が人気で嬉しい限りです!
ところで、当館のスタッフ内で話題になったのですが、ご紹介している《ウィーン工房壁紙:そらまめ》、実は空豆ではなく、エンドウ豆なのではと…。形がエンドウ豆に見えるような…。
皆さまはどう思われますか? pic.twitter.com/oOzaXenuIh
幸いなことに週明け3連休はお天気のようですね。お出かけの参考にしてもらえたら嬉しいです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
昭和にタイムスリップ『ニッポン国おかんアート村』展へ行ってきた【渋谷】
『ニッポン国おかんアート村』展【渋谷公園通りギャラリー】
またしても期日ギリギリですが『おかんアート展』行ってきました。
(展示は4/10夜7時まで)
不器用なくせに、刺繍・キルト・レースなど「女性の手仕事」*1とされてきたジャンルが好きな私。面白そうな展示がやっていると聞き、大勢の人でごったがえす渋谷へ意を決して向かいました(人ごみ苦手)
渋谷駅を出て右手にマルイ、左手に西武を見ながら進み、タワーレコードの角で左に折れます。坂道をすこし行くと壁に何枚ものポスターが。わかりやすい!
公園通りギャラリーは初めてだったのですが、パルコのすぐそばなんですね。
ギャラリーは勤労福祉会館の1階にあります。アール・ブリュット等の展示も多いとのことで、「専門的な教育を受けた美術ではない」という共通点から開催に至ったのかな?と推測。
入り口で注意点を聞き、展示室へ(写真撮影はOK、動画はNG)
見たことある!! 1歩足を踏み入れれば、そこは懐かしい世界
見出し通りです。あの頃、あの時代にタイムスリップした気分。
せっかく撮影可なので写真を見てもらったほうが早い、どんどん行きます。
トップバッター・キティちゃん(仮)紙細工
小物入れ? 鶴の背中と羽の間のスペースに飴ちゃんなどを収納するのではと予想します。折り目が美しい。
材料の説明がなかった気がするんですが、家族に写真を見せると「タバコの包装紙でつくるやつ」と即答。意外とメジャーな品なのかも。
地元ファンシーショップの店先のようで、見てるだけで楽しい。やはりここでもキティ(仮)強し。サンリオは著作権が厳しいのでは……とちょっと心配になりましたが。
おかんアートと呼ばれるジャンルは、経験上「まず自分の楽しみとして、徐々に家族や友人知人への手土産として洗練されていく」イメージがあります。世代を超えて愛されるキャラクターは、子どもや孫への贈りものにピッタリなモチーフだったのでしょうね。
勝手に「ふわふわ野菜スティック」と命名しました。かわいい存在が器にぎっしり。カラフルな後方のアマビエさんが世相を反映しています。
華やかなこちらは「ソープバスケット」といって、虫ピンをうまく使いリボンや造花で石鹸を飾ったオブジェです。爆発的に流行していたものの、素材が素材なので今ではほとんど残っていないとか。確かに私も見たことがありません。タンスのなかに良い香りのソープを入れる習慣はあったんだけどなあ。
いたいた。覚えてるわ、この金魚!
祖母がご近所さんからいただいた経緯だったような……かなり長い間いっしょに暮らしました。
今回驚いたのは、この金魚が手芸キットとして売られていたこと。その素朴さゆえに、口伝えで手芸好きに受け継がれてきたものかと想像してたんです。考えてみればキットは絶対にあったほうがいい。最初のハードルが低ければ初心者に優しく、挑戦しやすいですもんね。
このあたりからは「おかんアート」というより手づくり市やデザインフェスタといった感じ。もともと境目は曖昧なように思いますが、定義はどうなんでしょう。廃物利用の有無とか? それも時代や作風によって違ってくるはず。
布ぞうり、いいですよね。指がのびのびして大好きなんですが、Tシャツやハギレを使用したぞうりを買っても汗かきな私の足に負け、すぐ寿命になるのが残念。いっそ自分で作り方を覚えるべきなのか……。
本展覧会でいちばん好きだった作品は、森敏子さんの陶芸シリーズ。やさしい表情の犬や牛が愛らしく、そっと撫でたくなってしまいます。※禁止事項なので叶わず
根付のついたパンダは差し上げたおばあさまが手に握って眠るのだと作者インタビューで知り、ほのぼのしていたら「愚痴を言って聞かせている」とのオチが。いやいや、適度に愚痴や弱音を吐くのも大事ですよ。作品に人をリラックスさせる力があってこそだと思います。
特別展示『おかん宇宙のはぐれ星』
ギャラリーは3つのスペースにわかれており、『おかん宇宙のはぐれ星』は「おかんアートにかぎりなく近くありながら、独自の表現を展開する孤高の表現者」紹介とのことです。
現代美術に疎い私には、何をもって「独自の表現」とされているのか明確にはわかりません。けれど他の展示品と同じように、しっかり楽しませていただきました。
特別展示3名のうちのおひとり、荻野ユキ子さんの作品。
荻野さんは高田馬場にある名画座・早稲田松竹の清掃係であり、館内やトイレを自作のオブジェで飾る「アート担当」でもある方です。
実は私、早稲田松竹には過去何度か足を運んでるのですが、オギノさんの作品を見かけた記憶がなく……! 上映時間の合間で急いでいた&行かなくなってからHPで存在を知った、が理由だと思います。
こうして改めて拝見すると、ノスタルジーを感じる小さな世界が本当に素敵。草むらとか、お弁当に使うバランですよ! 次回映画館を訪問するときは必ずチェックします。
↑こちらで荻野さんの作品一覧が見られます。
「おかんアート」展は4/10まで。入館料無料・夜7時まで開催しています。日曜、渋谷に用事のある方はぜひどうぞー!
おまけ 「おとんアート」もいい味だしてます…我が家の場合
私の母は「おかんアート」的な手芸はしない人です。手先は器用で、既製服の種類が少なかった世代のために洋裁もできますが、必要に迫られての側面が強いと思います。
父に編んだセーターや赤ん坊の私に作ってくれたぬいぐるみも真っ当に(?)可愛く、やりすぎじゃない?というおかんアートに感じる過剰さ・暑苦しいほどの熱はありません。おかげで現在でも部屋に飾ったり着たりできるわけですが。
代わりにおかんアートを凌駕する異質な物体をつくるのが、我が父。
亡き愛犬をモチーフにした粘土細工です。
いかにも老犬でしょう? でもこれ、まだピカピカ毛艶の成犬時代に作られたものなんですよ……。
実際の犬の写真がこちら。
仔犬なので毛が短くぽわぽわしているものの、全体から受ける印象はずっと変わらなかった美犬です。それをあんな魔改造されて……。
父は絵を描くのが趣味なのですが、なぜか女性や子ども・動物といったモチーフが大の苦手。可愛げのかけらもなくなってしまうんです。就学まえの娘(私)を老婆のように描いたのは親戚中の語り草。
でも意外に気にいってるんですよね、この粘土人形。処分しようとするたびに「味があるからいいっか!」と生き延びてきた犬(粘土製)せっかくなのでブログでお披露目しました。笑っていただければ嬉しいです。
*1:訪問後、展覧会の趣旨にかなりの批判があったことを知りました。……が、私自身が消化しきれていないため当ブログでは触れません。公表されたものにさまざまな意見が出るのは健全だと思います。同意できるかは別として。